幕間:血も涙も

 男は、三人を背負って走っていた。

「ハァ…ハァ…ここまで来りゃ安全だ。お前ら、必ず――」

「筒上宗介。盟団同士の抗争で瀕死の仲間を治療しに行く途中か」

「…!」

 宗介と呼ばれた男は、謎の声に怯えつつも足を止めない。

「安心しろよ。俺はお前を虐めに来たんじゃない」

 直後。

「がっ…!」

 宗介の足に何かが突き刺さる。転倒し、抱えていた者達は道に投げ飛ばされた。

「そう、虐めに来たんじゃない。全く逆の立場だ。俺はお前を」

 転倒した宗介に、また鋭いものが刺さった。

「裁きに来たんだよ」

 背中に2度、四肢に1度ずつ斬撃を加え、投げ出された者達を蹴り飛ばした。

「ハハッ、人間数人、弱めの刃血鬼数人殺しといてこのザマか?」

「て…テメエ、誰なんだよ」

 血をダラダラと流しながら、宗介が訊く。その弱々しい声をかき消すかの様に、男は言い放った。

怨野うらみや。よーく覚えとけ、よく怨んどけ。義務は果たしたんでな」

 そう言って男――怨野は去っていった。

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