鬼ごっこ

 場所変わり、紅亡。

「命を作れるだと?まっさか無機物の命を賭けるなんて言い出すんじゃねえだろうな」

「その通りだが?」

「ったく…何のためのギャンブルだと思ってんだ、阿呆が。安定で得られた報酬なんざ――」

 紅亡は接近し、工鳴七の脇腹に血刃を刺す。

「臆病の産物だ、面白くねえだろ?」

「…やれやれ、勝負師ギャンブラーじゃなくて依存症のようだ」

 工鳴七は動じず、逆に紅亡を蹴り飛ばした。

「手段は何であれ勝ちは勝ち。利を得られるならば、私は喜んで不安定を取るさ」

「…じゃ、賭けてみようじゃねえか」

「何をだい?そもそも僕は勝負に乗る気なんか無い、彼を捕らえなければならないんだ」

「あいつを無事に逃がせるかを賭けようと思ったが…そっちが逃げるんなら仕方がねぇ。追撃させてもらうぜ?」

「君じゃ僕には追いつけない。フォールドしたほうが身のためだよ」

 床が抉れるほどに踏み込み、工鳴七は走り出す。

「チッ…待てやァァ!!」

 紅亡も同じ様に走り出した、その時。

「…!?」

「沸血…!?」

 二人は驚き、足を止めた。

 前方より、何者かが沸血を発動したのだ。

「何をやっているんだ、私の部下たちは…彼に対し沸血を使っては」

「間に合うか分かんねえけど…その前に」

 工鳴七の背後より、紅亡は飛び上がった。

「敵の真正面で、背中を晒すもんじゃねえぜ!」

「浅慮だな。隙を突かれても、私には関係ない」

「吐かしやがる…決死の大博打ハイリスクハイリターン!」

 両手の血刃で、幾度も斬撃を浴びせる紅亡。

 対する工鳴七も、血刃で攻撃を受け流している。

「甘い…連撃で私に届くものか…!」

「お前こそ、防戦一方じゃねえか。煽れば、俺が怒って動きが単調になるとでも?」

 互いを牽制しながら、血刃を激しく打ち付け合う二人。

(決死の大博打…彼の性格から考えれば、運が絡んでくるということは容易に想像できる。問題は…)

 カンカンカンカン!と、刃同士が激しく衝突する音が鳴り響く。

「俺の能力を暴くのに苦戦してるようだな…じゃ、バラしてやるよ」

「…何?」

「決死の大博打…ある条件を満たすことで、確率で戦闘能力が上昇する物だ」

「特定の行動…まさか」

「多分お前の予想通りだぜ。条件のうちには、「戦闘相手に能力を明かす」というのも含まれてる。んで、肝心の博打なわけだが…」

 紅亡は、先程までより遥かに強い力で、工鳴七の血刃を弾き飛ばした。

「勝ちだ。そろそろショーダウンと行こうじゃねえか」

 怯ませた隙に、工鳴七の両腕を切断。

「くぅッ…ぐ!」

「これでしばらく血刃は使えない。固まってろ、そこで」

 紅亡は工鳴七を蹴り飛ばし、系糸の方向へと逃走した。

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