四章 [鳴亡兵団]+ɑ
拉致
時刻は深夜、と言うには少し遅い午前4時。1時間もすれば焼け死ぬだろう。
「クソッ…無闇に動くとまた抉れる。敵に見つかろうものなら死は免れねえし、仲間は全員心做の餌食だ…」
男は歯ぎしりをする。
「
情けない姿を晒しながら、男は叫び続けていた…。
一方で、赤亡。
「血走さーん!いますかー?」
可能な限り大きめの声量で呼ぶ。
「…生きてるといいん――」
何かが、体から離れた。
「…は?」
右手、続いて右足。
「――ッはぁ…ぐぁ!?」
遅れてやってきた痛みで動けなくなったところで、飛んできた血刃が頭に突き刺さる。
「何…が」
「おい、五亡家の人間だ!」
「序列は知らんが、とりあえず下っ端にでもしてやろうぜ!」
「殺すなよ、貴重な資源だ」
「おら、ちっとばかし眠ってもらうぜ」
直後、赤亡は意識を失い、何処かへと連れて行かれた。
―――
「…ん…?」
見覚えのない光景が、赤亡の目に飛び込んできた。
殺風景な真っ白い部屋、正面に見える鉄格子。拘束されていた訳では無いが、足元には鎖。完全に囚人のそれだ。
「僕…血走さんを探して……あれ、治ってる?」
吹き飛ばされたはずの手足が、元通りになっていた。
「つまり…また誘拐?」
「その通りだ、赤亡家の者よ」
「え?うわっ!?」
天井に空いた通気口のような場所から、逆さまの状態で体を出した、細身の男性。
「だ…誰です?」
「ほう、初対面で敬語か。君とはまともな対話が出来そうだよ」
(対話?誘拐しておいて?)
赤亡の記憶は、突如襲ってきた者達が資源だの言っていたところまで。
「何を話すんです?素性がわからければこちらも話しようがありません」
「それもそうだな…では、名乗るとしよう。
五亡家。誘拐前に話していた者達も言っていた。
(五亡家…?字が分からないけど、「ふかこなき」と紅亡と赤亡と、あと2つ、赤に関連する家系があるんだろうけど…聞いたこと無い。いや、そこじゃなくて)
「ここは――」
「今ので気が付かなかったか?ここは盟団[鳴亡兵団]の本拠地。君を勧誘しに来たんだよ、私は」
「勧誘…?いや、僕は――」
「分かってるさ。君は既に盟団に加入している。そしてそれが、我らに敵対する罪狩りの盟団であることも」
看破されていると分かり、更に警戒を強める赤亡。
「あーそう怖い顔しなくたって――」
「系糸ィ!」
ドゴン、と響き渡る音とともに、亀裂が入る壁。
「何?」
「…待って、なにこれ?」
ラッパーのような服装の男が壁を蹴破り、牢の中へと侵入してきたのだ。
「…邪魔が入ったかな?」
「邪魔しに来たんだよ!!」
「…待てよ?」
赤亡は、見覚えがあった。
風貌、声、口調。
「…紅亡さん!?」
「久しぶりだなァ…系糸!」
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