初任務(仮)
成務票の機能がうまく働き、赤亡はものの数分で、それらしき人物を捕捉することができた。
(1.手の平に傷をつけ)
頭の中で唱えながら、右手の平を浅く切る。
(2.血刃を引き抜き)
流れるようにこなす赤亡。
(3.振りかぶって…)
狙いは目の前の男に定まっている。
(4.全力で投擲!)
勢いよく飛んだ血刃は、男の体に突き刺さった。
「痛った…何?誰?」
「あれ?」
混乱する赤亡。
今のところ彼がが遭遇した罪競いは、屈強だったり性格に難があったりしていたが、目の前の男は、そのどちらも当てはまらない。
直ぐに激怒することは無く、身体の大きさは平均程度。温厚そうな雰囲気。
(…人違いか…?)
「あんたか?僕に血刃を刺したのは」
詰め寄ってくる男。
(…罪競いのフリをして凌ぐか?新人アピールすれば最悪どうにか…)
「…えと、あの、最近刃血鬼になったばか――」
ぐさり。
「ぎっ…」
横腹に深く刺さる血刃。
「煩わしいんだよ、しっかり言えや」
「…間違ってたら謝るつもりだったんだけど、刺されてるしいいかな」
「あ?」
「
「…まさか」
「否定しないってことは、やっぱりそうか」
痛みに堪え、なるべくそれを隠しながら、できる限りの威圧をする赤亡。
「勝手がわからなくてね…僕は罪狩り。[赤連]所属の――」
([赤連]…あの二人がいる盟団だと?このガキが?)
聞こえた瞬間、なんの躊躇いもなく逃走する牙抜。
「…好都合。背中に刺さった血刃を引き抜けば――」
糸を繋ぎ、握りしめて引っ張る。
牙抜の動きが一瞬だけ止まり、直後に激しく吹き出す鮮やかな血飛沫。牙抜は、その場に倒れ込んだ。
「んー、これで完了…なのかな」
無事に遂行出来たことを喜ぶ赤亡。彼の関心は、既に別のところに向いていた。
「刺さった刃物って、引き抜いたら出血が増えるんじゃなかったっけ。でもなー、痛いんだよなーこれ」
抜くか抜かないか。結果を考えて葛藤する赤亡。
「…ク…ソ…」
「…生きてた?あの出血量じゃ無理だと思ったんだけど」
「たす…け…」
「…見張っておこ――うと思ったんだけど、そんな必要もないかな」
「仲間の叫びは俺の叫び。俺の
背後より、赤亡は、首に刃を押し当てられていた。
(どっから来たんだよこの人…物音も気配もなかったのに)
「答えろ、お前は誰だ?」
赤亡は後ろを振り向けないが、血刃を握る手と体温――すなわち、沸血していることを悟る。
(映画でしか見たことないよ…何これ、尋問のそれじゃん。耐えれるかな)
「君は彼のなk――」
「お前は誰だ?」
「えー、と。[赤連]所属、赤亡系糸…あの、早く助け――」
「[赤連]?ああ、あの盟団か」
(まるで聞かないなこの人。助けに来たんじゃないの?牙抜さん死ぬよ?)
赤亡は、殺人じゃ無いから問題ないと言う意識を持ってはいるのだが、とはいえ自分の手で生命を奪うのは些か抵抗があった。
「僕は成務票に従っただけです。僕は危害を加えるつもりはありません。お互い穏便に済ましませんか?」
「済まねえよ。俺を怒らせといてよく言うぜ」
話が噛み合わない。
「あなた、何しに来たんです?助けに来たんじゃ無いんですか?」
「助け?お前は何を言っているんだ、牙抜はもう助からない」
男こそ何を言っているのか。放っておけば、牙抜は苦しんで死ぬこととなる。
「まだ息は全然ありますけど…仇を取りに来た、って訳ですね」
「その通りだ。んじゃ、死んでもら――」
直前で赤亡は男を後ろに突き飛ばし、自身の指を切り落とした。
「多分今の僕なら…
血刃がある程度離れたところで糸を繋ぎ、ボーラの如く男に巻きつける。動きを止めたところで、刃血鬼のパワーを利用して上に跳ね上げた。
「そんで…叩きつける!」
空中に舞い上がった男を地面へ、そしてジャイアントスイングの如く、立て続けにビルへとぶつける。
「…ふーっ…こんなもんかな」
男はすでに気を失っていた。
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