幕間①
幕間①
今日は、大事な大一番だ。
常盤城高校の入学試験。
絶対に失敗は許されない。何がなんでも、愛すべき者のために、この一週間を乗り越えてその先にある目的を掴まなければならない。
ここは、タクシーを降りたロータリー。そして同時に、常盤城高校の校門前だ。
息を吸い込む。ここからは、情けも容赦も介在しない、戦場だ。気を引き締めていかければ。
と、ここでカバンの中のスマホが微振動。着信だ。
私は、じわじわと肌を焼く日差しから隠れるように、木陰に身を寄せる。そのままスマホを取り出して、耳に当てた。
「もしもし?」
『渋滞などに巻き込まれていないかね?』
「ええ。すでに校門前に到着しております、おとうさま」
『そうか。では、朗報を待っているよ』
簡素なやり取りだけをして、通話は切られた。まったく、心配性なんだから。
ホーム画面に戻ったスマホには、背景画面に設定している写真が映し出されていた。
ずっと同じ時を過ごしてきた、幼馴染の少年と一緒に撮った、ツーショットが。
「……」
彼が行方不明になってから、私の日常はずっと灰色だ。
絶対に、彼との日々を取り戻してみせる。
そのためには、こんなところで躓くわけにはいかない。
なんとしても、この試練を乗り越える。
「……喉が乾いたわね」
受験生の集合時刻まで、まだ余裕がある。
幸いなことに、ロータリーの向こうに売店があった。
きっと、受験生や、専属らしい送迎手の補給にも一役買っているのだろう。
私は自動ドアを通り、奥の冷蔵庫からカルピスのペットボトルを手に取り、レジへ。
レジは一つ。店員がワンオペで何人もの待ち客を捌いているようだ。
私は二人目。前の人間が精算を終え、次は私の番……となったその時だった。
私を遮るようにして、青髪の男がレジに割り込んできたのだ。
間髪を入れず、男の肩をガッと掴み、それを制した。
「……割り込みくらいで絡まないで欲しいですね。ボクは珈琲を買いたいだけなので」
凍てつく目で見下ろしてくる男へ、私はそれ以上に冷たい悪意を載せて返す。
「――私は、
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