第45話 リリア奪還作戦
俺はリリアを取り戻すため、東の森を馬で駆ける。
相手は百人程いるとのことだったので、足は遅いはず。
それに集団のためか、地面にはその痕跡が残っており、どちらへ向かっているか一目瞭然だった。
そして三十分ほど馬を走らせると、大人数の気配感じることができた。
「よし! 見つけた!」
遠くには行ってないだろうとは思ったけど、やはりノアの村からそれ程離れていなかったか。
ともかくここからは馬で行けば見つかってしまう。俺は手綱を木に結び、気配を消しながら集団へと近づく。
まずはリリアがどこにいるか把握することが先決だ。
俺は回り道をして集団の先へと向かい、木の陰からリリアの居場所を探る。
次々と人が通り過ぎていくが、リリアがいる様子はない。
それにしても⋯⋯レガーリア王国の兵士達は油断し過ぎじゃないか? 俺が見る限り、周囲を警戒しているようには感じられない。
これだけの大人数なので気が大きくなっているのか、それとも格下のサレン公国で襲われることなどないと思っているのか。
だがこちらとしては都合がいい。リリアを助けた後、撹乱して一気に脱出できる可能性が高くなるだけだ。
しかし集団が四分の一程過ぎた頃、一人毛色が違うと感じる男がいた。
馬に乗っていて、明らかに体躯が他の者とは違い大きい。鋭い視線を前方に向けており、この人物だけは気を張っているように見えた。そして俺の勘違いでなければこの男から魔力を感じる。
普段なら隠していなければ、魔力持ちかどうかわかるけど、何だかこの男からは異質な気配というか魔力を感じる。普通なら魔力を白い光のように感じるけど、この男からは黒い光を感じる。この男は警戒した方が良さそうだ。
そして集団の中盤が迫ってきた頃、一つの馬車が向かってきた。
馬車? これは当たりかもしれないな。
守るべき者を真ん中に置くのはどこの国でも同じだ。
俺は離れた位置で、馬車の窓に視線を向ける。するとガラスの窓の向こうにはリリアの姿が見えた。
幸いなことにリリアは疲れているように見えるが、無事のようだ。そして何かで縛られているようには見えない。
逃がさない自信があるのか⋯⋯いや、逃げないとわかっているのかもしれない。
リリアを捕らえる時、ボーゲンという男が子供達を殺すと脅した。それと同じ様に、もしかしたら逃げたら村の人達を殺すと言われていてもおかしくない。
そうなると真の意味でリリアを救う方法は⋯⋯
俺は一度、全ての戦力を確認するため、集団が通り過ぎていくのをじっと見る。
ん? あれは?
集団の後方にある荷馬車だが、見覚えのあるものが乗っていた。
確かエルウィンは鉱山から村に戻ってきた時、兵士達を見たと言っていたな。
その荷馬車には青く光輝くミスリルが乗っていた。リリアを拐った時に一緒に奪ったのか。
これでは国を守る兵士ではなく、盗賊だ。
俺はレガーリア王国のモラルのなさに怒りを覚える。
そして俺はリリアを取り戻す方法を考えながら、集団の先回りをする。すると森の中に、樹齢百年以上はありそうな大きな木があったため、迷わず木に登り、集団が来るのを待つことにした。
一番最悪なのはリリアを人質に取られてしまうことだ。そうなったら手出しが出来なくなる。
そのため、まずは集団の気をリリアから他のものへと逸らす必要がある。
魔法の一つでも撃てることができたら話が早いけど、生憎俺は魔法を使うことは出来ない。
今あるのは剣と狩りに使っていた弓と矢が六本。
だがこれだけあれば十分だ。
俺はリリアを助け出す方法を頭の中でシミュレーションしながら、馬車が来るのを待つ。
するとレガーリア王国の兵士達が目でも確認出来た。段々とこちらに向かってくると俺が乗っている木の下を通り過ぎていく。
相変わらず兵士達は油断しており、仲間達と談笑している。
そして異質な魔力を持つ者が通過し、いよいよ馬車が迫ってきた。
俺は背中に背負った弓と矢を取り出す。
矢を弓にセットし、上空に向けて力一杯弦を引く。
風は若干西南西に吹いているが的はたくさんある。外れることはないだろう。
そして俺は兵士達の目を逸らすため、天高く矢を放つのだった。
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