第17話 ラブレター
「これはいったい何でしょうか?」
リリアは手紙を見て頭にはてなを浮かべている。
一つだけ可能性があるとしたら、レガーリア王国からの手紙だ。
だけどまだ追放してから二日しか経っていないのに、手紙を渡す理由はあるのか? そもそもどうやって俺達の居場所を知ったんだ?
色々憶測は出来るが、考えても仕方ない。嫌な予感はするけどこれは手紙の中身を見るしかないな。
「わかりました!」
しかしリリアは中身を見る前に、手紙の内容に気づいたようだ。どうやらリリアには身に覚えがあったのか、はたまた聖女の勘が働いたのかもしれない。
「どういうこと?」
「これはあれですよ」
「あれとは?」
「ユート様宛のラブレターです」
「⋯⋯」
俺はリリアの思わぬ予想に絶句してしまう。
ラブレター? しかもあんなに小さな女の子から? いやいやそれはないだろう。しかも女の子なら俺へのラブレターになる。益々ありえないな。
それにしてもリリアとここ数日行動して思ったが、ちょっとずれている所があるよな?
今のラブレターもそうだけど、盗賊が風邪を引くとか。
人が良いせいで誰かに騙されそうだ。ここは俺がしっかりしないとな。
俺は改めてあらゆる面でリリアを守ると誓う。
「ユート様何かおっしゃって下さい! これでは私がおバカなことを言った、恥ずかしい子みたいじゃないですか!」
「あ~⋯⋯いや、ラブレターっていう線も、もしかしたらあるのかな? って」
「そのとおりです。あの子はユート様に一目惚れをされて、思いの丈を手紙に込められたに決まっています」
「いや、俺がラブレターをもらうことはないよ。むしろ一目惚れで手紙をもらうのリリアじゃないか? 可愛いし」
「かわっ! そそそ、そんなことありません! 私なんてただの引きこもりですし!」
引きこもりだったのは、聖女として国に管理されていたからだ。
「とにかく今は手紙の内容を見てみよう」
「そ、そうですね。ですが私が見てもいいのでしょうか」
「大丈夫。あの女の子はお兄ちゃんとお姉ちゃんにって言ってたから」
「あっ⋯⋯確かにそのように言ってました」
だからこれは少なくとも俺達二人に関係することだ。
「では確認しますね」
俺はリリアが手紙を開ける所を後ろから覗き込む。
そして開かれた手紙の内容が目に入るが⋯⋯
「これはどういう意味でしょうか?」
リリアが疑問に思うのも理解出来る。何故なら手紙の文章は少し抽象的だったからだ。その内容は⋯⋯
【咎人は天が月輪を示す時、黒闇に紛れて復讐者となり、再び罪を犯すだろう】
この手紙の差出人は、もう少しわかりやすく書けなかったのだろうか。
月輪やら黒闇やらどこか詩人のような、悪く言えばナルシストな言い回しをしている。
「この手紙の内容が本当なら、とんでもないことが起こりそうだ」
「さすがはユート様です。この文章の意味がわかったのですね」
「だけど実際に手紙に書かれたことが起きるかわからないけどね」
イタズラの可能性も否定出来ない。だけど何故知り合いもいない俺達にこんな真似をするんだ? しかし実際に手紙に書かれたことが起きてしまったら、とんでもないことになる。看過するわけにはいかない。
「とりあえずそろそろ待ち合わせの時間になる。東門に行きながら説明するよ」
「お願いします」
そして俺は手紙の内容をリリアに説明しながら、村長さん達との待ち合わせの場所へと向かうのであった。
東門に到着すると村長さん達の姿が見えた。
「お待たせしました」
「遅れてしまい、申し訳ありません」
「わしらも今来た所じゃ。それよりこれを見てくれ」
村長さんが嬉しそうに馬車を指差す。
馬車には食料や雑貨など多くの荷物が積まれていた。
「これでしばらくは生活することが出来る。二人には本当に感謝じゃ」
「いえ、俺達も住まわせてもらっていますから。それと俺の方からも見てほしいものが⋯⋯」
俺は先程少女からもらった手紙を見せる。
「なんじゃこれは? 咎人? 罪? どういうことじゃ?」
「おそらくですけどこれは――」
俺は手紙の内容を訳して説明する。
「なんじゃと! そんなことが本当に起きるというのか!」
「わかりません。何も起きなければそれに越したことはないですが、万が一のことを考えて警戒した方がいいかと」
「じゃがどうすれば⋯⋯」
「それは俺に任せていただけませんか? まずは――」
そして俺は村長さんに対策を伝え、ノアの村へと戻るのであった。
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