第2話
9時45分。
「おはようございます。本日からお世話になります、宮本です。よろしくお願いします。」
「おはようございます。面接のときにお会いしましたね。店長の武田です。よろしくお願いします。50分から朝礼を始めるので準備しておいてくださいね。」
やばい、緊張する。同じスタッフと思われる女の子たちは、見た感じ年齢も私と同じくらいか若いくらいだろうか。メイクもファッションもばっちりだ。
この会社のショップは3店舗に分かれており、メインの一番大きいショップがファミリー向けの『ローズ』、若者向けの『メヌエット』、キッズ向けの『モッカ』だ。朝礼は『ローズ』で行うと決まっている。
レジ前に店長が立ち、私を含めて6人が向かい合うように横一列に並ぶ。朝礼が始まり、さっそく自己紹介をする。名前を名乗り以上!みたいな。
そして仕事が始まる…と、思いきや。
トントン。肩をたたかれ振り向くと、ふんわりとした雰囲気の女の子がいた。
「私、
「はい、初めてです。」
「じゃあ、納品するまでロープレしましょう。」
「ロー…プレ?」とは?一体?
「はい、お客様に接客するときの話術といいますか…。」
あー、わかった!何気なくウィンドウショッピングを楽しんでると、隣に店員さんが寄って来てあれこれお勧めするアレだ!私がお客だったとしても、もっとも苦手とするアレ。
「では、宮本さんがお客様の振りをしてください。私がお手本を見せます。いらっしゃいませ~。本日はどのような物をお探しでしょうか?」
うわぁ…本当に始まっちゃったよ。大丈夫かな、私?
ロープレを交代して30分ほど経った頃に、大きな段ボールの箱が運ばれてきた。
「あ、納品がきたのでロープレはここまでにして、一緒に検品をしましょう。」
やれやれ、やっと解放されたわい…。
この3年間、行くとすれば近所にある大型スーパーだけ。ほぼ動いていない、人と喋らない生活だったため、喉はカラカラで体力と精神面がすでにヤバい。けれど、検品に入ると黙々作業になるためラクだった。それに、新しい洋服がどんどん入荷されていくのも楽しい。と、思っていたところへ…。
「あ、宮本さん。お客様が入ってきたので接客してきてください。」
うむ、ほぼ強制。いや、仕事だから当たり前か。
「いらっしゃいませ!本日はどのような服をお探しでしょうか?」
あ、ほんとこれは自分でもウザいと思う。作り笑いで大丈夫だろうか~。
という一日だった。家に帰るなりどっと疲れたものの、一日を外で無事に過ごせた!
ちなみに今日、私に接客ロープレをご指導してくださった小泉由香里は20歳だった。あの落ち着きからして、年上かと思っていたが…。
でも職場は同年代の女の子たちだけだから、特にパワハラとかの心配もない気がする。
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