第3話 お嬢様へのアップルパイ 護衛マーク【一章完結】

 お嬢様はわがままだ。

 ある日のこと、とびきり美味しい他にはないあの喫茶店のアップルパイを買ってきなさいと命令されてしまったのだ。


 むちゃくちゃだ。



 お嬢様は、あの日からアップルパイに目がないのだ。俺がお嬢様と平民の暮らしを体験するときのこと。アップルパイという得たいのしれない食べ物を無料で食べた。その結果、

 余りの美味しさに感動したお嬢様は、再び城下町へと足を運ぶ。


 赤いりんごのような髪が目立つので獣人が被るような頭をすっぽりと隠すくらいの帽子を被り、王国の専属服職人がオーダーメイドで作り出した純白のドレス。



 純白のドレスとは反対の黒い色をした。とても歩きにくそうなハイヒール。踵の部分が一本の杭のようになっていて踏まれたら骨が折れそうな感じをしている。


 とても城下町の人間とは思えないような服装をしているのと、俺が護衛でそばにいることで、

 人々は、察しがつく。あっ、王女だとな。

 しかし、王女様とは呼ばずに町の人は、お嬢ちゃんと呼んでくれている。

 すると、出店をしていたおばあちゃんが、

 路地裏を指差して小声で囁くように話す。


「あっちの方に行くと、美味しい物があるよ。騙されたと思って行ってみな」


 進んでいくと、甘い香りが鼻をくすぐる。


「早く入ってみましょう」とお嬢様は言うと俺は首を横にふりやれやれと思いながら店内に入っていく。


 カランという音とともに店内からいらっしゃいませと声が聞こえる。


「今、お伺いしますので、お好きな席にお座り下さい」


「うむ」


 椅子に腰掛けると城下町を歩いたせいか疲労が溜まった足が喜んでいるように思える。

 これはサービスなのか?

 清らかな透明な液体が入ったものとガラスの職人が作り出した精密なコップが二つ置かれている。

 見つめているといつのまにか店主らしき人物が

 横に立っていた。


「それはお水です。安心して飲めますよ。毒味として私が飲んで見せますね」


 コップに透明な液体がドボドボと注がれていく。

 コップを手に取り、ごくごくと喉をならして液体を流し込んでいく。

 思わず、こっちもたまらずにコップと液体の入った物をとりお嬢様と俺は二人一緒に飲む。


「う、うまい」

「美味しい、こんなの初めて」


「気に入って頂いたようで、なによりです。今日のおすすめはアップルパイとなっております」


「では、アップルパイというものを一つ、金はいくらだ。金なら何枚でもだすぞ」


「いえ、お金は入りません。今回は初めてのお客様とお見受け致します。なので、アップルパイは今日は無料なのでご安心ください。すぐにお待ちします」


 店主は奥に入っていくと三分以内に出てくると

 白い皿に盛られた。ケーキのようなものが目の前に置かれる。

 よく焼かれた茶色の生地から見える。黄色の何か、横から見ると生地と黄色い何かが交互に層になっているのがわかる。


「フォークとナイフでお召し上がり下さい。ではごゆっくり」


 フォークとナイフは使い慣れている貴族の嗜みだ。


 フォークを茶色のところにさしてみると思ったよりも固いのがわかる。

 よりフォークをさしていくと段々と柔らかく

 すんなり入っていく。

 フォークだけでは切れないところを上品にナイフで小さく切っていく。

 生地の中にクリームが入っていたようで、生地につけて食べてみる。思っていたよりも生地が崩れてしまった。


生地とクリームのコラボレーションは口の中で

甘くそしてサックとした食感が口の中を楽しませてくれる。

黄色い何かも美味しいに違いないフォークでさしてみるとやや固い。

甘い。これは果実なのか?なんという果実なのか気になるな。

お嬢様は礼儀作法などを忘れて、食を進めている。

おかわりが欲しそうな目でこちらを見ているので、すっと俺の皿をお嬢様にさしだす。


にっこりとしたこの顔が俺は好きだ。

この甘い気持ちは固く閉ざしている。


甘いりんごのような気持ちを持って日々護衛を勤めている。

マーク。

幼い顔立ちには似合わないような鍛え上げられた肉体。

お嬢様、いや、好きな人の視線を釘づけにする為に強くなったマークは、目の前の美味しい食べている彼女の笑顔で満足しているようだ。

彼女、アーミリオン・ヴィ・ルーナの視線は、アップルパイへと向けられている。

いつかアップルパイのように彼女をものにしてみせると誓ったのだ。


またのご来店お待ちしてます。

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とある喫茶店 恵。今日もひっそりと営業中。~ただの喫茶店ではないようだ~どうやらバフを追加してくれるらしい?! 宮川祭 @miwaka_sai

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