第9話 犯人の言い分

 夜の捜査会議が始まった。

 まずは萩谷への取り調べの結果が報告された。


 萩谷は初め、知らないの一点張りだったが、出島が掴んだ伊佐奈と恋人関係だったという事実を提示すると急に震えだしたという。


「アイツが悪いんだ。俺は悪くない」


 それしか言わなくなった。


 出島はてっきり萩谷のことだから、動物でも轢いたんだろうと白を切ると思っていた

 しかし、実際には違った。


 その理由はドライブレコーダーが教えてくれた。


 押収された萩谷の車には、破棄されることなくドライブレコーダーが残されていたのだ。

 その理由も動画の内容が明らかにした。


 それはちょっとしたホラーだった。


 街灯のない真っ暗な田舎道を車が進む。


 すると突然、前方に人影が映る。

 その人影はまっすぐ、こちらに向かって走ってくる。


 女の影だった。


 視線を外すことなく、何の迷いもなく、車に突進してくる。


 最期に女は笑みを浮かべた。

 ほんの一瞬だったため、確実に見えたわけではない。


 だが、出島にはそう思えた。


 萩谷が伊佐奈を轢き殺したという線は消えた。

 むしろ、伊佐奈の自殺とも思われた。


 しかし、萩谷が伊佐奈をその場に残し、立ち去った事実に変わりはない。


 萩谷優作には罪がある。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る