第5話 ひき逃げ犯

 車に戻る途中で会津のスマホが鳴った。

 申し訳無さそうに一礼すると、会津は先に車へとジェスチャーをして、鍵を差し出した。


 出島は受け取り、車の助手席に座って待つ。


「今、ひき逃げ犯が捕まったそうです」

 そう言いながら、会津はドアを開け運転席に座る。


「どんなヤツだ?」

「そういえば、出島さん元々こちらでしたよね」


 言いながら会津は車を出す。


「萩谷優作です」

「……ああ、アイツか」


 出島は元々この地方都市の生まれだった。

 故に昔から萩谷の名は良く聞いていた。


 地元の有力者として名を馳せた一族で、そのドラ息子が萩谷優作だ。


「自宅のガレージにはフロント部分が破損した車があったそうです。押収して、これから調べるそうです」


「少しはこの街も綺麗になるな」

「そうですね」


 二人は打ち解けた会話を交わし、ひとまずの解決を見たひき逃げ事件に胸をなでおろした。


 しかし、未だ菊市伊佐奈の謎は残ったままだった。

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