第4話 虚偽の意味するところ

 大家が到着するまでに本部への連絡を済ませ、アパート住民たちへの聞き込みも終えた。


 103号室に住んでいるのは女性一人で、他に住民はいないようだ、とのことだった。

 スナックのママからもらっていた画像を見せると、皆見たことがある顔だと答えた。

 しかし、挨拶程度の近所付き合いで、名前まで知っている人物は一人もいなかった。


 アパートの前で待っていると、腰の曲がった老女がゆっくり歩いてきた。

 出島と会津は待ちきれないとばかりに近づく。


「大家さんですね」

「はい」


 早速、出島が家永小夜の画像を見せる。


「103号室の住民は、この人物で合っていますか?」

「ええ、菊市さんです」


 出島と会津は顔を見合わせた。


 すぐに大家に103号室の鍵を開けてもらうことになった。


 薄いドアを開ける。


 小さな六畳一間のワンルームだった。

 若い女性の一人暮らしには向いていない。


 事実、他の住民は皆、高齢の一人暮らしだった。


 部屋には家具らしい家具はなく、わずかな服が綺麗にたたまれ、畳に直に置かれた状態だった。


「身分証を探してくれ」

 出島は会津に言い、自分も当たりを探す。


 大家は心配そうな顔をして玄関に立ったままだった。


「ありました」

 会津が声を上げる。


 出島はすぐに歩み寄り、会津が手にしたものを覗き込む。


 免許証だった。


 顔は確かに家永小夜だった。

 しかし、名前は菊市伊佐奈とある。


 菊市伊佐奈が本名で、家永小夜は偽名ということだろう。


 名前を偽ってスナックで働いていたことは、菊市伊佐奈が頭蓋骨を持っていたことと何か関係するだろうか。

 出島はぶるっと武者震いをした。

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