第3話 新たな疑惑

 思っていたよりも古いアパートが現れた。

 亡くなった家永小夜の履歴書に書かれた住所は、築何十年と経っているだろう二階建てのアパートだった。


 会津は先に歩き、一番手前のドアのインターホンを押した。


「はい」

 出てきた男性に出島は事情を話し、大家に連絡してもらう。


 男性は大家に電話をして、向こうが出たところでスマホを渡してきた。


「すいません警察のものですが」

 そう言って出島は、男性から借りたスマホに話しかける。


「103号室の家永小夜さんについて聞きたいことがあるので、合鍵を持ってアパートの方に来てくれますか」

「は、はあ」


 老齢の女性の声が返ってくる。


「103号室ですね……あれ? さっき、住民の方の名前、なんとおっしゃいました?」

「家永小夜さんです」


「家永? 違いますよ。103号室は菊市さんです」

「えっ?」


 出島は思わず会津の顔を見た。


「ちょっと待ってください」

 スマホを耳から離し出島は会津に確認する。


「履歴書の住所はここで間違っていないな?」

「はい。もちろんです」


 会津は迷うことなく答えた。


「履歴書をここに」

 出島が言うと、すぐに会津は目の前で広げる。


「すいません。もう一度確認します」

 再びスマホを近づけ、出島は履歴書に書かれた住所を大家に伝えた。


「はい、合ってますね。でも、名前は菊市伊佐奈さんです」

 大家は答える。


「すいません。そちらの書類と合鍵を持って、ひとまずこちらに来てもらっていいですか」

「ええ。わかりました」


 通話を切って、スマホを男性に返す。


「どういうことだ」

 出島は一人呟いた。

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