第6話 vs笹原優花
「明日、
友達である
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翌日。わくわくしたら眠れなくなるものだが、案外ぐっすりで、快適なノンレム睡眠を天から受け取った。最近何故か寝れていなかったのでとても助かる。決戦の日なんだから。
腹が減っては戦はできぬ。朝からコンビニ飯を極めていく。あー最高。飲むヨーグルトで菓子パンを流し込み、
「うん、何やってんだろ。俺。」
スマホの画面を真っ暗にして髪の毛を整える。ちょっとだけ後ろの髪がはねていたのに気付く。正直、こんなことをしてる時間なんてないんだが…。
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学校の下駄箱。コンビニから学校までは歩いて15分といったところか。その間に優花に何を言おうか、のんびり考えていた。のんびりだったからか、殆ど何も考えついていないが…。
上靴に履き替えるのも、もう慣れた動作。ただ、今日は慣れていないことをたくさんするせいで、慣れた動作にも違和感を持ってしまう。
いやぁ…人生って難しい…。
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世界史の授業中。スマホをこっそり見ている蒼夜を横目に、俺はノートの端を音も立てず破って、シャーペンを2回程ノックする。皆が先生の話を聞いているせいでその一時だけ浮いた存在になり、一部の人は俺の方をチラ見してくる。その中には、笹原優花もいた。
(お前なぁ…こっちを輝いた目で見つめないでくれよ…。)
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昼休みの屋上は、男子高校生2人だけの空間となっていた。
「伊織、お前は今日どんな感じで動くんだ?」
「放課後呼び出しかなぁ…どうやって呼び出そうかなぁ…」
「あぁ、それならいい案が…」
「その案、聞いてもいいか?」
俺は内心、わくわくしながら蒼夜の言葉を待つ。頭の回転も早く、最早相方と化してる蒼夜。信頼できる親友、蒼夜。
「俺が早退する。そのときに下駄箱に手紙を入れておく」
「なんだ、至って普通の案じゃないか」
なんだよ、こいつ。普通に良い奴だな。まあ、早退する理由がこれだけなのは申し訳ないが…。
まあ、書くかな。謎にポケットに入れてあった5cm四方の小さい紙に、
「屋上で待ってる、返事をさせてくれ」
こう書いた。多分、通じるだろう…。男遊びが激しくなければ…。
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放課後のチャイムが鳴る。音は控えめ。風と陽射しは強め。嫌になっちゃう。
少し小走りで屋上に向かう。
さあ、やろうじゃないか——。
✡。:* .・゚.゚・. *̣̩
屋上で待つ。頭を空にし、また言いたいことを詰める。ずっと繰り返す。
ふぅ…深呼吸をした、そのときだった。
「伊織くんっ!!!!」
屋上のドアが勢いよく開き、笹原優花が息を切らしながら向かってきた。その肩と共に揺れるところはしっかり揺れている。
こいつ、あざとい。
「はあはあ…ごめん、伊織くん。呼び出してどうしたの?」
こいつ、絶対理由知ってるだろ。手紙に書いたし。
「この前の返事をさせてほしい」
「えっ…」
手を後ろで組んでモジモジしている優花。
「ごめん、俺はお前と付き合えない。お前の前の彼氏が死んだと風の噂で聞いた。」
「……なんでよぉ…」
少し涙目になる優花。よしよし。
「君、彼氏に新島誠って人いたよね?最悪の振り方をしたと聞いたんだよ」
「…なんでそれを」
「さあな、自分の過ちくらい後悔しろよな。それじゃ」
屋上から出ていく俺。閉まるドアは少し強めに音を立てる。
「うわぁぁぁぁぁぁ……なんで……どうして……」
悲しみの泣き声がドア越しで聞こえてくる。ざまあみやがれ。かなりすっきりした。
「うまくいったよ、ありがとうな」
蒼夜に連絡する。心のモヤが晴れ、純正の心を持って家に帰ろう。久々にゲームを満喫しようと思う。
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