第6話 vs笹原優花

「明日、笹原優花ささはらゆうかに返事してくるわ」


友達である相川蒼夜あいかわそうやにそう宣言した。前世の記憶を持つ俺は非常に楽しみだ。絶対に復讐してやる——。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


翌日。わくわくしたら眠れなくなるものだが、案外ぐっすりで、快適なノンレム睡眠を天から受け取った。最近何故か寝れていなかったのでとても助かる。決戦の日なんだから。


腹が減っては戦はできぬ。朝からコンビニ飯を極めていく。あー最高。飲むヨーグルトで菓子パンを流し込み、


「うん、何やってんだろ。俺。」


スマホの画面を真っ暗にして髪の毛を整える。ちょっとだけ後ろの髪がはねていたのに気付く。正直、こんなことをしてる時間なんてないんだが…。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


学校の下駄箱。コンビニから学校までは歩いて15分といったところか。その間に優花に何を言おうか、のんびり考えていた。のんびりだったからか、殆ど何も考えついていないが…。

上靴に履き替えるのも、もう慣れた動作。ただ、今日は慣れていないことをたくさんするせいで、慣れた動作にも違和感を持ってしまう。

いやぁ…人生って難しい…。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


世界史の授業中。スマホをこっそり見ている蒼夜を横目に、俺はノートの端を音も立てず破って、シャーペンを2回程ノックする。皆が先生の話を聞いているせいでその一時だけ浮いた存在になり、一部の人は俺の方をチラ見してくる。その中には、笹原優花もいた。


(お前なぁ…こっちを輝いた目で見つめないでくれよ…。)


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


昼休みの屋上は、男子高校生2人だけの空間となっていた。神楽伊織かぐらいおりと相川蒼夜は、今日の復讐の事について話していた。


「伊織、お前は今日どんな感じで動くんだ?」


「放課後呼び出しかなぁ…どうやって呼び出そうかなぁ…」


「あぁ、それならいい案が…」


「その案、聞いてもいいか?」


俺は内心、わくわくしながら蒼夜の言葉を待つ。頭の回転も早く、最早相方と化してる蒼夜。信頼できる親友、蒼夜。


「俺が早退する。そのときに下駄箱に手紙を入れておく」


「なんだ、至って普通の案じゃないか」


なんだよ、こいつ。普通に良い奴だな。まあ、早退する理由がこれだけなのは申し訳ないが…。

まあ、書くかな。謎にポケットに入れてあった5cm四方の小さい紙に、


「屋上で待ってる、返事をさせてくれ」


こう書いた。多分、通じるだろう…。男遊びが激しくなければ…。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


放課後のチャイムが鳴る。音は控えめ。風と陽射しは強め。嫌になっちゃう。

少し小走りで屋上に向かう。


さあ、やろうじゃないか——。


✡。:* .・゚.゚・. *̣̩


屋上で待つ。頭を空にし、また言いたいことを詰める。ずっと繰り返す。

ふぅ…深呼吸をした、そのときだった。


「伊織くんっ!!!!」


屋上のドアが勢いよく開き、笹原優花が息を切らしながら向かってきた。その肩と共に揺れるところはしっかり揺れている。

こいつ、あざとい。新島誠にいじままことのときにこんなやつと付き合っていたのか…。


「はあはあ…ごめん、伊織くん。呼び出してどうしたの?」


こいつ、絶対理由知ってるだろ。手紙に書いたし。


「この前の返事をさせてほしい」


「えっ…」


手を後ろで組んでモジモジしている優花。


「ごめん、俺はお前と付き合えない。お前の前の彼氏が死んだと風の噂で聞いた。」


「……なんでよぉ…」


少し涙目になる優花。よしよし。


「君、彼氏に新島誠って人いたよね?最悪の振り方をしたと聞いたんだよ」


「…なんでそれを」


「さあな、自分の過ちくらい後悔しろよな。それじゃ」


屋上から出ていく俺。閉まるドアは少し強めに音を立てる。


「うわぁぁぁぁぁぁ……なんで……どうして……」


悲しみの泣き声がドア越しで聞こえてくる。ざまあみやがれ。かなりすっきりした。


「うまくいったよ、ありがとうな」


蒼夜に連絡する。心のモヤが晴れ、純正の心を持って家に帰ろう。久々にゲームを満喫しようと思う。

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