第5話 蒼夜に連れられ

友達の相川蒼夜あいかわそうやに学食のカレーうどんを奢ってもらった日の放課後。俺は蒼夜に連れ出され、駅の近くのカラオケに来ていた。学校からも近く、学生の財布にもかなり優しい。最高。


「何歌う?」


俺は蒼夜に尋ねる。こいつ、どんな曲を歌うのか全く想像できない。流行りの曲とかかなぁ。


「日本国民なら国歌だろ」


「え、お前そういうやつだっけ?」


「知らん」


無言で国歌を入れた蒼夜。俺は死んだ魚の目で眺めていた。


「はぁ疲れた疲れた」


「まだ一曲だよ馬鹿」


無駄に97.487点ととても高く、逆にどこでミスったのかを聞きたいくらいだ。


「そういや、こんなん歌ってる場合じゃなかったわ。伊織、お前に聞きてぇことあるんだけど」


「なんだよ」


「お前、笹原優花ささはらゆうかに告白されたろ、どうすんのさ返事、きっと何もしてないだろ」


「え…?なんで知ってる…?」


俺、誰にも言ってないぞ?何で蒼夜が優花のこと知ってるんだよ…?


「優花がお前に凄え目を向けてたぞ」


そう言った次の瞬間、蒼夜がまさかの事実を俺に伝えた。


「実はさ、俺腐れ縁何だよね、優花と」


衝撃の事実だった。幼馴染ってことだよな?


「あいつ、ずっとあんな感じなんだよ。彼氏作って振ってを繰り返してるんだよ、お前も巻き込まれて災難だな」


「あぁ…そうだよな…」


確かに、そういえばそんな感じの性格だよな。新島誠にいじままことのときにはあくまで噂程度。腐れ縁の蒼夜が言うのなら本当なんだろう。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

結局、あの後は蒼夜とストレス発散と題して、ロック調の曲を歌い続けた。あいつもあんなの歌えるんだなぁって。


「優花のやつ、どうしようかなぁ…」


今は割と振る方向で頭の中で話は進んでいる。問題はどうやって振ろうか。シンプルにごめんなさいかな。でも、新島誠の時のあの気持ちは忘れない。傷ついたあの気持ち。少しだけ、やり返そうと思う。2日後、覚悟しておけよ、笹原優花。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆翌日。至って普通に学校へと向かい、授業を受ける。昨日の夜は早く寝たお陰か、全く眠くない。睡眠って凄え。昼休みまで余裕に授業を受けきった俺は、蒼夜の所へと走った。


「蒼夜っ」


「伊織か…どうした?俺眠いんだけど」


「起きろ、明日笹原優花に返事してくるわ」


「何!?蒼夜、目が覚めました」


「なんやこいつ」


「楽しみだなぁ…お前の決断」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る