心霊怪獣

「はい、私お手製の紅茶です。どうぞ」


 天草千鶴は、紅茶をカップに注ぎながらそう話し掛けた。

 そこはとある山奥に建つ、小さな一軒家の庭。小さなとは言うが、柱や壁には美しい装飾が描かれ、家具や小物も鑑定士が見れば驚く有名品ばかりが並ぶ。家全体の資産価値は、一般人の生涯賃金を軽く何倍も上回るだろう。

 千鶴が使うカップも、一杯で人の人生が左右されかねない金額の高級品だ。ましてや千鶴のような、ほんの二十代の若い女性であれば尚更であろう。

 しかし彼女は、決して雑ではないが、細心の注意を払っているとは言えない程度に自然とカップを使っている。一般家庭が扱うプラスチック製コップのように、普段遣いの食器が如く。


「……全く。相変わらず、金に糸目は付けないな」


 その姿を前にした一人の初老の男性は、肩を竦めながら呆れ返る。

 男の名は横山太一。とある大企業の会長を務める、日本でも有数の大富豪だ。

 そんな彼ですら、目の前のコップは(彼の財力からすれば普段遣いに出来るとはいえ)高級品だと思える。しかし千鶴はまるで気にした様子も見せない。


「お金にあまり興味がありませんから。私の手許にあるより、世の中に出した方が良いでしょう?」


 悪気なく、本心からこれを言えるぐらい、彼女は金品に興味がないのだ。


「……まぁ、お前が金を使わなかったら、世界中の富が集まりそうだしな」


「そうそう。全く面倒臭いですよ、私はただ作りたいものを作っているだけなのに。だからって断ると職人が軽んじられるとか言われて……」


 あっけらかんと語る千鶴。さも、自分は大した事などしていないと言わんばかりだ。

 実際は、大した事どころか人類史に残る偉業を為したといっても過言ではない。

 千鶴は所謂発明家だ。これまでに幾つもの発明品を開発し、それはこれから人々の生活を大きく変えるだろう。そしてつい先日は。それどころか重力干渉機の基礎理論、この大元となる大統一理論の『画期的』な論文を書いたのも彼女だ。

 今から一ヶ月前に行われた人類最大の反攻作戦――――そこでアルファ・オカルティアに(殺せてはいないが)止めを刺したのが重力干渉機であるなら、彼女こそが人類の救世主と言っても良い。太一も、長期的に見れば彼女に助けられた身と言える。

 正に天才科学者だ。表には出てこないが、人類最高の頭脳といっても過言ではない。


「で? 今日はどんな用で来たのです?」


「……一つ、聞きたい事がある」


「聞きたい事ですか。私で答えられる事なら」


「お前は、あのオカルティア達をどんな存在だと思う? そしてこれから、世界はどうなると思う?」


 太一が尋ねると、千鶴は一瞬キョトンとした顔になる。

 次いで、くすりと笑った。


「いくら私が天才と言われていても、なんでも知っている訳ではないのですよ? オカルティアの事なら、専門の研究者に尋ねた方が正確でしょう」


「だろうな。それでもお前の印象を聞きたい。重力干渉機を生み出したお前のな」


「あれは私が作った訳ではないのですけどねぇ」


 くすくすと笑い、千鶴は小さく息を吐く。

 そしてしばし考え込むように沈黙を挟んだ後、落ち着いた口振りで話す。


「まず、人類は未だ崖っぷちです。ほぼ滅亡確定の状態と言えます」


 あまりにも、救いのない話を。


「確定、か」


「作戦開始までに被害を受け過ぎました。立て直しどころか、現状維持も難しいほどに。そして一月前の戦いで兵力の大部分を失い、武器も喪失しています」


「ふむ……」


「対してオカルティア側は、アルファ・オカルティア以外は健在。数百体のオカルティアと、数百万匹のオカルティア幼体が地球を飛び回っています。また、数千万匹とも言われる小型未確認生物も野放しです」


「……つまりあの作戦は無駄だったと?」


「いいえ。生存率ゼロパーセントが、十パーセントぐらいになったという話です。それに作戦自体は悪くない、というより他に手はなかったでしょう。あともっと早くにアルファ・オカルティアと交戦していたら、多分武器不足で負けていましたよ」


 にっこりと微笑む千鶴。確かにそれなら無駄ではないが、希望と呼ぶにはあまりに弱々しい。


「それと、アルファ・オカルティアはいずれまた現れるでしょう。それこそ今日や明日に出てもおかしくありません」


 更に希望を打ち砕く言葉を、千鶴は続けた。


「あの戦いで受けた傷を癒やし、戻って来ると?」


「うーん、あり得ないとまでは言いませんが、恐らくないでしょう。あれだけ痛い目を見た訳ですし、性懲りもなくやってくるとは思えません」


「何? ならばまた現れるというのは……」


「別個体の話です」


 別個体。

 その言葉に、太一は息を飲む。確かに可能性自体は、科学者や政治家、軍隊では議論されている。生物兵器にしろ野生動物にしろ、繁殖能力を持つ生物が一個体しかいないと考えるのは非現実的だ。

 だから千鶴の意見は、決して突拍子のない事ではない。されどその言葉の断じ方が、まるで強く、太一の動揺を誘う。


「(昔からコイツはそうだ……時々仮説を、当然のように断言する。そしてそういう時の仮説は、間違っていた事がない)」


 証拠のない言葉。されど今までの経験から、太一は千鶴の言葉を信じる。


「それにオカルティアと同等、或いはそれ以上の存在も、いずれ来るでしょうね」


 しかしこの意見については、いくら断言口調でも鵜呑みには出来ないが。


「オカルティア以上の、存在だと……!?」


「そんなに驚くほどの話ではないかと。アルファ・オカルティアはバリアのようなものを展開したそうじゃないですか。つまりアレは、バリアを必要とする生き方……互角かそれ以上の存在と戦う前提の生態をしています」


「それは……」


「幼体の頃から持ち合わせているならその延長線という事もありますが、観測された限りアルファ・オカルティアだけの能力ですからね。それと先の戦いで見せた逃走能力。あんなの、負ける事前提の能力ですよ。勝ち目のない敵がいるんじゃないですかね」


 さも大した事ではないかのように、千鶴はつらつらと語る。

 確かに話の筋道は通っている。バリア防御能力にしろ多産多死な繁殖能力にしろ、頂点に君臨する生物には相応しくない。喰われる側の生態と考える方が自然だ。

 何より、先程太一が考えていたように、千鶴が断言で語った時の推論は外れた事がない。

 オカルティアという脅威を乗り越えたところで、そんなのは化け物達の末端に過ぎないというのか。人類が叡智を結集させた一大反攻作戦すら、化け物達からすれば小動物の悪足掻きなのか。

 人間が宇宙で最も偉大とは、太一は考えていない。だとしてもここまで弱者扱いされるのも不本意である。

 人類が何万年と掛けて築き上げた文明を、単体で一蹴する生命体。不条理の固まりとしか言えない、理不尽な何か。


「奴等は、一体なんなんだ……」


 沸き立つ想いが、無意識に太一の口から零れ落ちた。


「それこそ、私ではなく専門家に聞いてほしい問いですね」


「……まぁ、余興のようなものだ。お前の予想を聞かせてほしい」


「仕方ありませんね。本当に、こればかりはただの想像ですよ? 推論なんてとてもじゃないけど言えない、私の空想です」


 何度も、繰り返し『仮説』である事を念押ししてくる千鶴。事実証拠も何もない、完全な空想なのだろう。

 開いた千鶴の口から出た言葉は、確信に満ちていたというのに。


「横山さんは、クオリアというものをご存知ですか?」


「クオリア? ……いや、知らん。生き物のクリオネとは違うものか?」


「ええ、生物学的な用語ではありません。これは哲学用語であり、科学の世界では主に脳科学やロボット工学などで重視されている考えです」


 そう言うと千鶴は、不意にカップを指差す。千鶴が淹れた紅茶の入った、高価なカップだ。


「この紅茶。私達は紅茶を飲むと、独特な苦みと甘さを感じますよね?」


「ああ、そうだな」


「それがクオリアです。重要なのは、クオリアというのは感覚ではなく、渋いや甘いと感じる心の事である点です」


「……その、なんだ。それは感覚とは違うのか?」


「違います。そう感じる事と、感覚は異なります」


 いまいち千鶴の言いたい事が分からず、太一は顔を顰める。すると千鶴は紅茶を一口飲み、話を続ける。


「例を挙げましょう。そこらにいる昆虫ですが、彼等も五感を持ち合わせています。つまり嗅覚や味覚などです。ですが、その感じ方は人間と異なります」


「まぁ、虫だからな……人間よりも単純そうではある」


「そんな話ではありません。まず昆虫などは、物質に反応します。ですが反応するだけ。それがなんであるかなど、考えてもいないのです」


 例えばハエが食物(動物の死骸など)を発見するのには、嗅覚を用いている。

 しかしそれは「ああ、良い臭いがするなぁ」と思って近付くのではない。死骸から発せられる様々な匂い物質……揮発性の分子を触角で感知すると、のだ。

 分子が来た方には餌となる死骸がある。身体をそちらに傾けた状態で飛べば、当然餌のある場所へと向かう。曲がり過ぎれば今度は反対側の触角で感じるので、そちらに身体を傾けるだけ。方向転換しようと考える必要もない。

 そしていざ餌に辿り着いた時も、「美味しそうだ」とか「早く食べたい」とは考えない。死骸が持つ特定の物質に反応し、口を付け、飲み込むという動作を行う。ハエ自体には食べ物を摂取しているという感覚すらないだろう。ただ、そういう仕草を取っているだけ。

 全ての行動に『意思』や『感覚』は必要ない。受信した化学物質に対し、特定の行動を起こす。これが虫や細菌など、人間が『下等生物』と呼ぶような生物の行動原理だ。


「重要なのは、生きていく上ではこれでなんら問題ないという事です。むしろ合理的とさえ言えます」


 その下等な生き方を、千鶴は肯定する。


「合理的? 考えも何もないのにか?」


「そうです。余計な事を考えないから、最適な行動を取れます。事実地球生命の大半は、虫や細菌などです。高度な知能を誇る我々哺乳動物なんて、全生物の総量から見ればごく僅か。どちらが成功者かは言うまでもありません」


「むぅ……」


「そもそも、高等だから意思があるという考えも誤りです。我々は猿や犬の思考が見えません。つまり彼等が、クオリアを持っているとは判断出来ない」


 犬は嬉しいと尻尾を振る、などの言説がある。実際には色々な例外もあるが、とりあえず楽しい事があった時にその行動を見せるとしよう。

 しかし実際に犬が『嬉しい』気持ちを抱く必要はない。ボール遊びをしている時に脳内のセロトニン濃度が増加し、そのセロトニンに神経系が反応して、結果尻尾が動けば、外からは「嬉しいと尻尾を振る」ように見えるのだ。

 そう。生物の行動に「心」は必要ない。ホルモンや生理的反応だけであらゆる行動を起こせる事は、数多の生物達が証明している。

 ところが人間には、心がある。


「本来、人間にも心はいらないんですよ。セロトニンが増えれば笑顔を浮かべる。こんにちはと言われたらシナプスの応答によりこんにちはと返す。殴られたら痛覚神経からの信号で涙を流し、大きい音を聞いたら筋収縮を起こして縮こまる。全て生理的反応で引き起こせますし、実際それらの多くは意思とは関係ない反射的行動です」


「そうは言うが、しかし……」


「勘違いしないでほしいのですが、これは心が必要ないから消してしまえ、という意味ではありません。必要ないのに、どうして我々は心を……クオリアを持っているのか。そういう問い掛けです」


 何故人間はクオリアを持っているのか。クオリアなどなくとも『人間らしい振る舞い』は可能な筈なのに、どうして人間は心を持ち合わせているのか。

 これがクオリアという考えの根幹だ。そしてこれはロボット工学などで極めて重要な考えである。高度な知能を持つとクオリアが発生するのなら、高性能AIにもクオリアは生じるかも知れない。だが知能だけではクオリアが生じないなら、そこに心はない。賢いだけで道具のままだ。

 ロボットに人権を与えるべきか、それとも道具のまま扱うべきか。クオリアの有無は人類の産業や法律にも、いずれ大きな影響を与えるだろう。哲学者暇人のつまらない考えではないのである。


「このクオリアが何故生じるのかですが、現時点では様々な仮説が出ています。どれが正しいかは、今のところは定まっていません」


「……そう簡単に結論付けられるものではなさそうだしな」


「ええ。さて、話をオカルティアに戻しましょうか。オカルティアですが、機械には一切映りません。また、動物達の行動から、恐らく人間以外の生物にも見えていないでしょう」


 急に話がオカルティアに戻り、太一は僅かに戸惑う。その戸惑いが落ち着くのを待つように、千鶴は一呼吸置いてから話を再開した。


「面白い共通点ではありませんか? 人間だけが間違いなく持っているクオリアと、人間だけが存在を認知しているオカルティア。或いはオカルティアには、クオリアを持つ人間だけが見えているのかも知れません」


「…………何が、言いたい?」


「うーん。これを言うのはあまりに突拍子もない上に非科学的なので、ちょっと憚られるのですが」


 如何にも自信がなさそうに、けれども顔に浮かぶ笑みはイタズラをした子供のように、千鶴は勿体振る。


「オカルティアは、魂だけの存在なのではないかと」


 やがて語る言葉は、少し気恥ずかしそうで。


「た、魂……?」


「人間の言葉で言い表すなら、という前置きは必要でしょうが。しかしそうであれば、様々な事が説明出来るのです」


 あまりに突飛な話に太一が戸惑うが、千鶴はお構いなしに話す。

 曰くオカルティアの姿が人間の目にしか見えないのは、魂だけの存在だから。

 と考えれば、動物達がオカルティアに反応しないのは当然だ。魂を持たない他の生き物や道具には、オカルティアの存在は映らない。それは光や音とは違い、五感に関与しない部分なのだから。

 そしてオカルティアに襲われた人間が目覚めないのは、魂を喰われてしまったから。

 魂――――『クオリア』を持つ人間は、クオリアなしでは動けない。他の生き物と違い、人間が動くには『心』の機微が必要だから。身体は心がなくとも生理的に機能するが、自発的行動を起こさない。だからあたかも意識不明であるかのような『振る舞い』をする。


「つ、つまりなんだ? 奴等は、幽霊か何かだと? そんな非科学的な……」


「さぁ、どうでしょう。あくまでも私の想像ですし。或いは幽霊よりも、高次元存在と言うべきかも知れませんね」


「高次元存在?」


「オカルティアは重力を操っていたでしょう? あのような力が使えるのは、次元の異なる存在だからではないでしょうか」


 重力というのは、世界を形作る四つの力(強い相互作用・弱い相互作用・電磁気力・重力)の一つである。しかし他の力と比べて、重力はあまりにも弱い。どれほど弱いかといえば、次点の弱さである弱い相互作用よりも十五桁以上弱い有り様だ。

 何故こんなにも重力は弱いのか。様々な考えが出ているが、その一つに「力が別次元に流れている」というのがある。人間が感じる重力というのは重力本来の力の『上澄み』或いは『絞りカス』であり、殆どの力は別次元に逃げてしまっているという考え方だ。


「この考えが正しければ、彼等が重力を使えるのも頷けます。我々は重力の、ほんの片鱗しか理解していない。オカルティアは全てを知っている。だから彼等は無からブラックホールを作る事も、難しくないのでしょう。信仰が重力を生むのも、それが魂から生じたものであり、重力の根幹に作用出来るから、かも知れません」


「…………………………」


「おや、どうしましたか? 何やら頭が痛そうに顔を顰めていますが」


「これが、顰めずにいられるか……」


 千鶴に尋ねられ、太一はため息混じりに答える。

 あくまでも想像。推論以下の空想だ。千鶴自身そう言っている。

 だがそれでも、千鶴が確信して語った『予想』が外れた事はない。だからこそ彼女は天才なのだと持て囃される。いや、天才という言葉さえも生温い。

 もしもこれが事実であれば……


「もしも本当にその通りなら、人類に待っているのは破滅ではないか……」


 あまりにも、お先真っ暗な話だ。魂の世界なんて、今の科学に理解出来るものではない。仮に理解出来たとしても、何百年も後の話だろう。つまりオカルティアを完全に制御出来るようになるのは、恐らく数百年後の事。

 その間にオカルティアは、きっと人類文明を滅ぼす。

 太一は深々とため息を吐く。もしもの、想像の話だと思っていても、絶望感が胸を苛む。


「おや、そうでしょうか」


 ところがその絶望話をした当の千鶴は、ニコニコと笑うばかり。

 絶望するどころか、希望があるかのように笑っている。


「……何を笑っている?」


「何故と言われれば、ワクワクするからです。これもただの想像ですが……先程の仮説通りなら、この地球で魂を持つのは我々人間だけ。何故オカルティアや小型未確認生物達が持つ魂を、我々人間も持っているのです?」


「それは……」


 答えようとして、太一は言葉を詰まらせる。

 何故、人間だけが魂を持つ?

 「人間が特別な存在だから」という答えは、あまりにもご都合主義が過ぎる。オカルティアや小型未確認生物といった、人間以外にも魂を持つ存在がいれば尚更だ。

 何か合理的な、証拠はなくとも筋道の通った理屈はある筈。それがなんであるかは、太一には答えられないが。


「私が思うに、人間の魂とオカルティアは祖を同じにするのではないかと」


 しかし『天才』である千鶴は、答えられる。


「……祖を、同じに?」


「例えば、そう、例えばですが……大昔の人類は、魂なんてない、他の猿と変わらない存在だったかも知れません」


 千鶴は『想像』を語る。

 数十万年前、何かのきっかけでオカルティア達の次元から、一部の『魂』が地球へとやってきた。

 魂達は何を考えたのか、はたまた特に意図などないのか。当時最も高い知能を持っていた生物である人間の祖先に宿った。これにより人間は心を手に入れ、優れた情緒と知能により社会性を発展。魂達も天敵のいない世界で数を増やし、共に繁栄していった。

 されどその繁栄は、ついにオカルティア達に見付かってしまう。

 魂を見付けたオカルティアは、餌が豊富だと判断。繁殖に適した環境と考え、続々と乗り込んできたのではないか――――


「なんの根拠もない話ですけどね」


「……その話の何処に、ワクワクする?」


「簡単な話ですよ。世界は、私達が思うよりもずっと広いという事です」


 千鶴は笑う。心から、子供の如く無邪気に。


「魂達がひしめく世界。さぞや多くの魂が、オカルティアのような存在が、溢れているのでしょう。私は是非とも見てみたい。魂の、人間の心の起源を」


 焦がれるように、求めるように。

 光悦とする千鶴の顔はまるで恋する乙女のよう。想像を語る時のものだとは、太一には到底思えない。

 少なくとも千鶴は確信している。だから彼女は魂のある世界に行きたがっている。まるで

 そして幸か不幸か、千鶴にはそれを成し遂げるだけの頭脳がある。いや、或いは知っているのは魂なのか。


「(十年後か五十年後か……コイツは何時か必ずやるだろうな。どんな方法になったとしても)」


 未来の人類が迎えるであろう波乱を想像し、太一は乾いた笑みを浮かべる事しか出来なかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

心霊怪獣オカルティア 彼岸花 @Star_SIX_778

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ