第87話 魔王の地下迷宮 その1

初めて降りた地下迷宮3階。


ここの敵は、強さこそ大したことはなかったのだけれど、とにかく毒や麻痺、盲目の状態異常を引き起こすスキルを使う敵があまりにも多かった。

折角、今までユーリーと依頼でちまちまと貯めていたサルビア、ヒソップ、セイボリーがあっという間に底をついてしまう始末。

しかし、そのおかげもあって僅かな時間で4階への階段が見つかり下りることが出来た。


4階に降りると、今までとはうって変わって敵も全体攻撃をするモンスターが出始めた。


「来るで!」


「あぁ、分かっている」

「エリア・マジックシールド」


クラスさんのマジックシールドで、コドモドラゴンのファイアブレスを防いだあと、私のコールドストームでそれらの集団を倒した。

この階は、爬虫類系や昆虫系のモンスターが多いようで、私が新たに試し始めた・・・・・コールドストームがとてもよく効いた。


「ふぅ…マリアちゃん。あと何回くらい唱えられるかな」


「そうですね…コールドストームならあと10回くらい行けるかと思います」


「えっ!?まだそんなに行けるの?」


「そうですね。何か良く分からないんですが、あの魔法・・・・を撃ってから使用できる回数が異常に増えたんですよね」


「あぁ…あの例の魔法かぁ…」

「ちなみに、俺はあと3回くらいしかエリア・マジックシールドは唱えられないぜ!」


親指を立てて白い歯を光らせながら、俺はまだまだやれるぜ、みたいなアピールをしてきた。


「威張って言う事ちゃうけどな~」


チサトさんはそう言いながら、カヤさんにどうしようかと尋ねた。


「そうですね。もう少しだけ探索して、見つからなければ戻りましょうか」


そういうわけで、もう少しの間探索することにした。

何を探しているのかと言えばエレベーターで、地下1階の隠し部屋にそれはあったのだけれど、そこにはこう書いてあったのだ。


『このエレベーターを使いたくば、地下4階にある動力スイッチを起動せよ』


というわけで、探しているわけなのだ。


「ノルは大丈夫?」


「うん、大丈夫だよ。平気平気」


そう言って、ぐっとガッツポーズをした。

ノルは現在、敵に状態異常を引き起こす恐慌悲鳴と、仲間を呼び寄せる動員悲鳴の2種類のスキルを使用することが出来る。

なお、動員悲鳴は、ゾンビやスケルトンを呼び寄せるスキルであるため、使用を禁止しているのは言うまでもない。

ともかく、探索を再開してから間もなく長い通路へと行きつき、そこを歩き始めてから既に20分は経過していた。


「とりあえず、あと10分程歩いてみて、まだ続くようやったらいったん帰ろか」


「そうだな…って、俺が一応パーティのリーダーなんだけど」


「ええやん、ええやん、細かいこたぁええやん」


右手の手首を振り、カラカラと笑いながらチサトさんは言う。

それから少しして、前方に扉が薄っすらながら見えた

傍まで行ってみると、扉の右横の壁にはこう刻まれていた。


『この先、汝らの行方を阻む者あり。心して通るが良い』


「おぉ!何か凄くワクワクしますねぇ!」


そう言って現れたのはリョクお姉様だ。

リョクお姉様は、私は戦う事も出来なければ治療の杖も使えないんですよぉ、えっへん。

ということで、ずっと姿を消していたのだけれど、興味が湧くものがあると姿を現すのだ。


「カヤさん、どうしましょう。このまま行きますか?」


「そうですね。とりあえず、進んでみましょう」

「この扉には罠が仕掛けられていないみたいですし、一方通行の扉というわけでもないようです」


「でしたら、私は再び姿を消しますよぉ」


そう言うと、リョクお姉様は再び姿を消した。

ちなみに姿を消している間はチサトさんの胸の中に隠れているらしく、彼女曰く『めっちゃムズムズする』とのことである。

ともかく、こうして私たちは扉を開け、中へと入って行ったのだった。

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