第71話 わらわらと集まって来た
それは、ある日、突如としてやってきた。
深夜、トイレに行きたくなって目を覚ました私は、恐る恐る一人石畳の廊下を歩いていると、何やら中庭の方から何やらザッザッザと、本来するはずのない音が聞こえて来た。
「一体…何ごとかしら…」
恐る恐る窓の外を覗き見ると、それはもう無数の人影が中庭にあったのだ。
「あわわわわわわ…」
腰を抜かしそうになりながら4本脚で慌てて部屋に戻ると、ユーリーの体を揺さぶった。
「ん…なにぃ…?」
「何?じゃないわ!中庭!中庭にもの凄く人がいるのよ!」
「まさかぁ…ふあぁ…」
ユーリーは、あくびをしながらベッドから起き上がる。
「カヤさんも呼ばなきゃ」
そう思って物置の方に目を向けた瞬間、目の前に人影が。
「ぎゃーーーっ!!!」
と、いう叫び声と共に、危うくお漏らしをするところであった。
漏らしかけただけよ、あくまで。
実際に漏らしてはいないからね。
「済みません、マリアさん。驚かせてしまったようで」
「いいの、いいの。そんな事より中庭に凄い人影があるのっ!」
「そのようですね。しかし、特にマリアさん達に危害を加えるつもりはないようです」
「それって、つまり…」
「はい。殺気を全く感じません」
とにかく二人と一緒に廊下に出て、再び窓の外を見た。
「なるほど、そういうわけですか」
カヤさんは直ぐ納得したように言う。
「どういう事なんですか?」
「どうやってここを嗅ぎつけて来たのか、理由は私にも分かりませんが、目的はマリアさんですね」
「私っ!?」
まぁ、確かに私は美少女だから好意を持つ殿方が複数現れてもおかしくはないのだけれど、でも、夜中に来るというのは礼儀知らずにもほどがあるのではないかしら。
「うわぁ…ゾンビとかスケルトンがいっぱいいるね…」
索敵のスキルを使ったユーリーが言う。
「え?なんだ…私のファンじゃないのね…」
「いや…ある意味ファンではあると思うけど…」
ユーリーは、指で頬を掻いて苦笑いしながら答える。
「マリアさんに浄化してもらおうと、集まって来たのでしょう」
「それだけ、マリアさんの浄化能力が優れているという証拠なのでしょうね」
カヤさんは、冷静に状況を分析する。
浄化なんて、私だけじゃないだろうに、何故、私のところにやって来るんだろう。
ここが魔王城だから?
ともかく、このまま放置しておくわけにも行かない。
流石に城の中に入って来られたら流石に嫌だし…臭いとか。
「ここから、エクソシスムは放てる?」
ユーリーは言う。
「うーん、分からないけど…とりあえずやってみるわ」
私は、中庭全体に行き渡るように頭の中で思い描きながら意識を集中させる。
「よし!エリア・エクソシスム!」
次の瞬間、中庭全体が光に包み込まれゾンビたちは次々と昇天していった。
「やったわ!」
私は、昇天していくゾンビたちに、次こそはよい人生が待っているようにと祈りを込める。
こうして、私は中庭に集まった全ての人達を浄化させた………って…あれ?
「まだ、一人だけ残ってる…」
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