第59話 神様を知る人
食事が終わると、次に登場したのはケーキ。
現在、目の前のテーブルには苺が所狭しと並べられた、直径30cm程のクリスマスケーキが置かれている。
なお、これは街で購入した職人さんの手により作られたものだ。
ケーキのお供は、ユーリーが淹れてくれた紅茶でレモンが添えられている。
「ろうそくは、何本にしようかしら?24日だから24本にする?」
「ははは、それは流石に多すぎだよ」
ユーリーは苦笑する。
「じゃあ、12月だから12本?」
「それも多いような…そもそも、そんなに挿せる箇所ない程いちごが多いから…」
「あ…3本にしたら良いんじゃないかな」
「マリアとカヤさんと僕の分ってことで」
「あら、それ良いわね。そうしましょう」
私たちのやりとりを、カヤさんはただ微笑みながら見守っていた。
「カヤさんも、それで良いでしょうか?」
「私は、お二人の良いようにしていただくことが、何よりの望みです」
「でも、私の事も考えていただき、誠に恐悦至極に存じます」
「だって、ユーリー」
「そこまで深く考えたわけじゃないのですが…」
そこまで真面目な返答がくると思っていなかったユーリーは恐縮してしまい、そんな彼を見て私はくすくすと笑った。
こうして、私は3本のろうそくを均等に挿して、指先に出した火の魔法でろうそくを灯した。
そして、私たちはお祈りのポーズをして目を閉じる。
「私たちの神様。貴方様のご加護により今年も無事この時を迎えられました。来年も私たちが共にこの日を迎えられますよう努めてまいります。願わくばこれまでと変わらず加護をお与え下さい」
私は古くから伝わる祈りの言葉を述べた後、目を開けてろうそくの火を消した。
「それにしても、お祈りの言葉の神様って、夢の中でお会いする方と同じなのかしら」
「さぁ、どうなんだろうね」
「僕は、神様だと思ってるから同じ方じゃないかと思うけど」
「あ、私も神様って言ってる」
「カヤさんは、どう思われますか?」
「私は夢を見る、という事が無いので何とも言えないのですが、信じることが重要なのではないかと思います」
「確かに」
カヤさんの言葉に、私たちは納得した。
「でも、あんなに気さくな神様なら、ああいう祈りの言葉なんてしなくていいよ、って言いそうよね」
「そうそう、全然気取らない方だからね」
頭にはてなマークを付けているカヤさんに、私たちの見た神様の事を話した。
「なるほど……マリアさん達が言われる、神様の正体が分かりました」
という、カヤさんの言葉に、私たちは驚いた。
「えっ!?カヤさん、ご存じなんですか?」
私は、テーブルに手を付けて身を乗り出すように立った。
「はい、詳細は話すことが出来ませんが、確かに彼はこの世界にとって神と呼ばれるに相応しい存在ですよ」
カヤさんの言葉に、私たちは驚きと同時に嬉しさでいっぱいになった。
「やっぱり、あの方は神様だったんだ」
そして、それを知った後にいただいたケーキと紅茶は、いつにも増して美味しく感じられたのだった。
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