第55話 許可が下りた

12月も中旬となると外では雪が積もり寒さも厳しくなってきているけれど、ここ迷宮の中はといえば外に比べると遥かに温かかった。


「雪や風が無いからかしら」


「そうかも知れないね」


そんな日常と変わらない会話が出来るくらい、もう地下二階の難易度は下がっていた。


「そろそろ、良いかも知れませんね」


何気ない話をしてる私たちに、カヤさんが言う。


「何がでしょうか?」


「実のところ、来年の春までは退治等の依頼は無理だと思っていたのですが、私の見立てが誤っておりました」

「今のお二人であれば大丈夫でしょう」


その言葉に、私たち二人は顔を見合わせた。


「それじゃあ」


「はい、許可いたします」


私たちはハイタッチをして喜びを表した。


「ところで、この迷宮って2階までなんでしょうか?」


ユーリーが素直に疑問に思った事を口にした。


「いえ、3階以下もあります」

「ただ、今のお二人だと、間違いなく全滅するでしょう」


……知りたくなかった情報だった。

あれ?でも、下に続く階段は見当たらなかったけれど…。

と、いうことは、地下2階へと続く階段同様、隠し扉の先にあるのだろう。


「そういうわけでして、今後は退治の依頼も受けて行って戦闘の経験を貯めて行きましょう」


こうして、地下迷宮による戦闘訓練は一旦終わりを迎えたのだった。

そして、現在、居間に置いているパソコンの画面を見ながらうなっている。


「ないね」


「そうね…」


ユーリーと一緒に画面に映し出される依頼を見ながらの会話。

ジャイアント・ラットの繁殖期は春と秋の二回あるのだけれど、成長までにはそれなりに時間がかかるので、その時期になるまでは退治対象になるほど姿を現さない。

幼少で単体なら、普通の人でも簡単に退治出来るし。


「うぅ…せっかく許可が下りたのにぃ」


そんな私たちを顎に手を当てながら眺めていただけのカヤさんであったが、こう提案して来た。


「それでしたら、もう少し強い…そうですね、ゾンビなんてどうでしょう」

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