第54話 みんなおそろい
誕生日の夜は疲れていたからなのか、それとも、お腹いっぱいに食べたからなのか、ベッドに入ると直ぐに眠りについた。
『やぁ、こんにちは。神だよー』
(あ、神様。お久しぶりです)
(神様が来られたという事は、新しい魔法を教えていただけるという事でしょうか?)
『ぴんぽーん。だいせいかーい』
『と言っても、僕が教えてるわけじゃないけどね』
『まぁ、いいや。それじゃあ、いくよー』
(はい。宜しくお願いします)
私は、いつものように膝を床につけてお祈りをするようにポーズをとった。
そして目が覚めた。
「…なるほど。理にかなっている」
とはいえ、その魔法を使う日は恐らく来ないだろう。
何故なら、私は魔王を目指す者なのだから。
そんなこんなで、私たちは相も変わらずスライモやスケルトンと戦闘を繰り広げる一方、もちろん普通の依頼もこなしている。
そして、今は12月初日、街へと向かう馬車の中。
寒さも厳しさを増し、装備の上からコートを着て更にフードを被っている。
「うぅ…流石に寒くなって来たわね」
「そうだね。そろそろ装備用の冬物を買った方が良いかも」
「では、街に着きましたら早速お店に行きましょうか」
現在御者をしているカヤさんが言う。
「前から気になっていたのですが…カヤさん…その装備で寒くないんですか?」
カヤさんは、最初に出会った頃のような半袖では無く長袖に変わっているものの、とても寒そうに見える。
セーターより薄そうな服を着ているだけなのだから…えっと…『せーらーふく』って言ってたかしら。
「いえ。私は寒さを感じることはありませんので全く平気です」
そうだった。
カヤさんは、アン…なんだっけ、そういう人だった。
すっかり忘れていたけれど。
そんな他愛も無い話をしながら街へと到着。
「それでは買い忘れの無いように早速お店へと参りましょう」
「すみません」
「いえ、お気になさらず」
こうして、私たちはボッタクル商店へと入ると物色を始めたのだった。
「あれー?マリアちゃんにユーリー君」
物色をしていると、程なく店主の
「あれー?何でリリちゃんがここにいるの?」
蘊蘊さんの視線は明らかにカヤさんに向けられている。
「ご無沙汰しております」
あー、そっか。カヤさん冒険者してたって話だったもんね。
でも、名前のどこにリリの要素が?
「しっかし、相変わらず寒そうな格好してるねぇ」
「少しは周りに合わせた方がいいよぉ」
「そんな薄着だと、マリアちゃん達が変人を連れて歩いてるみたいになっちゃうしさ」
「…なるほど、それは気付きませんでした」
「…ってわけでぇ…」
そして、城に帰って来た私たちは購入した商品をテーブルの上に並べている最中だ。
各々、趣味趣向に合った防寒具が並ぶ中、唯一全く同じものがそこにはあった。
「マフラーが三つもありますね。蘊蘊さんが間違えて入れられたのでしょうか」
私たち二人は、顔を見合わせて笑う。
「いいえ、それで間違いないですわ」
「だって、一つはカヤさんの分ですもの」
そう言って、私は両手に持ったマフラーをカヤさんの首に巻いていく。
「折角ですし、三人おそろいがあった方が良いかな、と思いまして」
私は、そう言ってマフラーを巻き、ユーリーもそれに続いた。
「私如きのために…ありがとうございます。大事にしますね」
そう言うと、カヤさんはたまに見せる優しい笑顔をしたのだった。
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