第52話 いらない誕生日プレゼント

スライモとの初戦から1週間ほど経った頃には、スライモが何体現れたところで、もはや敵ではなくなっていた。

そして、今日は11月11日の私の誕生日。

誕生日だからといってお休み、なんていう事も無く、本日も地下迷宮2階において戦闘訓練は行われていた。

とはいえ、カヤさんが朝のうちに街まで走ってケーキを買って来てくれているので、終わってからの楽しみはある。


「今日はマリアさんのお誕生日ですし、サプライズと行きましょう」


カヤさんも、粋な事を言われるのね。

そう思いながら、何だろうとわくわくしていると、カヤさんはこう続けた。


「そろそろ、スケルトンも倒してみましょう」


………全然嬉しくないサプライズだった。

引きつった笑いをしつつ隣にいるユーリーに視線を向けると、彼はそんな私を見て苦笑いをしていた。


「ま…まぁ…いつかは通る道だし、やってみたらどうかな」


ユーリーは、そう言うと一転して爽やかな笑顔を見せて来た。

それ、絶対に私以外に見せたら駄目だからね。

あ、カヤさんは無害だからいいけど。

そういうわけで、今日はスケルトンが出るまで迷宮探索が続く事になった。

元々、スケルトンの出現率はそれほど高くないこともあり、出くわしたのはその話をしてから1時間も後のことだった。


「どうやら、ちょうど良い数のようですね」


そう言うカヤさんだが、現れた数は3体で、私たちは2人。

数では不利であった。


「それでは、始めて下さい」


「とりあえず、今までと同じでいいかな?」


「そうね。今までのスケルトンの動きは一応見て来たけど、そんなに複雑な動きはしていなかったわ」


話し終えたあと、ユーリーがスケルトンにめがけて突進、垂直に振り下ろした剣は見事に命中、と思ったけれどスケルトンが装備している盾に阻まれてしまう。

そのスケルトンが、今度はユーリーを攻撃。

ユーリーは、垂直に下された剣を左に避けると、その先にいた別のスケルトンが同様に彼に攻撃を仕掛けた。

その攻撃を剣で難なくいなした後、最後のもう1体のスケルトンが繰り出した攻撃も難なくいなしたのであった。

ここで、私に攻撃のチャンスが巡って来た。


「ファイアボール」


狙ったのは、ユーリーが最後に相手をしたスケルトン。

ユーリーにいなされて態勢を崩していたスケルトンは避けることが出来ず見事に命中、体が崩れて灰となって消え去った。

私の次に攻撃を仕掛けたのはユーリー。

スケルトンの1体に突進して、今度は垂直ではなく、スケルトンの腰に目掛け剣を横に振り払う。

今回は防御されることも無く、スケルトンの体は見事なまでに上下真っ二つとなり灰となって消え失せた。

残りは一匹。

最後のスケルトンは、ユーリーに向かって剣を振り下したものの、彼の剣によっていなされて態勢を崩した。


「よし!」


ユーリーはそう言うと一旦後ろに引いた後、スケルトン目掛けて再び突進して間近くまで接近したところで飛び上がった。

そして、いっぱいに振り上げた剣を、スケルトンの頭上目掛けて振り下ろしたのである。

スケルトンは盾で防御したものの、ジャンプしたことによって威力の増したユーリーの攻撃を完全に防ぐことが出来ず、よろけるように後方へと下がって行った。

その隙をついて、私はファイアボールを放ち、スケルトンに止めを刺したのだった。


「ふぅ…」


「やったね、マリア」


「ええ、そうね」


そう言い合って、私たちはハイタッチした。


「マリアさん、ユーリーさん。素晴らしい闘いでした」


そう言って、カヤさんは手を叩いて祝福してくれた。

最初は、泣き叫ぶほど怖かったスケルトンだったけれど、いつの間にか慣れてしまっていたようだ。

もしかしたら、今なら、もう何も怖くないかも知れない。

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