第51話 食べても美味しそう
「ぎゃーっ!いやーーーーっ!」
地下に潜って早々に出くわした魔物に叫び声を上げた私は、ユーリーの背後に隠れると皮鎧の下に着こんでいる彼のチェインメイルを必死に掴んだ。
「わっ!マリア、そんなところつかんだら動けないっ!」
そんな慌てふためいている私たちを他所に、カヤさんはその魔物をあっさりと一刀両断にして刀を鞘に収めると、私たちの下までやって来た。
「済みません。スケルトンまで出て来るとは思ってませんでした」
てっきり怒られるのかと思ってたけれど、そうではなかったようだ。
「とりあえず、スケルトンは私が対処しますので、スライモのみマリアさん達だけで戦ってみて下さい」
こうして、私たちは迷宮の奥へと歩みを進めて行く。
そして、程なく通路の右側にドアが見えて来た。
「この迷宮ではドアを開けると高確率で魔物とエンカウントしますので、そのつもりでいて下さい」
その言葉に、私たちはコクリと頭を下げた。
「では行きます」
下りて来た階段の扉と同様、ドアの鈍い音が通路に響き渡る。
そして中へと歩みを進めた時、それは現れた。
「ふよふよ~」
可愛らしい鳴き声のようなものと共に、スライモ3体が現れた。
あ、スライモというのは、サツマイモのような姿をした軟体魔法生物である。
「か…可愛いっ!」
「抱きたくなるような可愛さだわ。攻撃するのが可哀想なくらい」
そう感想を述べる私に対し、カヤさんは言う。
「抱きつこうとすると、攻撃してきたとみなして突進してきますので注意して下さい」
「ちなみに、走っている馬車の車輪に跳ね飛ばされた小石が当たるくらいの痛さがあります」
何それ、結構痛そう。
「それでは、始めて下さい」
こうして、戦闘は始まった。
「どうする?ユーリー」
「とりあえず、僕が1体攻撃するから、マリアは魔法の準備だけしておいて」
「もし、倒しきれなければ、それを魔法で攻撃して、倒せた場合は他のどちらかを攻撃して」
「ええ、分かったわ」
話をし終わると、ユーリーは1体に向かって突進し、剣を垂直に振り下ろした。
それは見事に命中し『ふよふよ~ん』という断末魔?のようなものと共に、スライモは光の粒となって消え去った。
ユーリーが倒しきったので、私は準備しておいた魔法を別の1体に向けて放った。
「ファイアボール」
自分が放てる限界の威力のファイアボールを放ち、その直撃を食らったスライモは光の粒となって消え去った。
残りは1体。
最後のスライモは、仲間を倒されたから怒っているのか、それとも単純に本能なのか、私の方に向かって突進してきた。
しかし、その突進は一直線であったため、カヤさんの訓練を受けた私には避けるのは造作も無かった。
そして、そのスライモは私の後ろで待ち構えていたユーリーの一振りによって、光の粒となって消え失せたのだった。
「お見事です」
そう言って、カヤさんは手を叩いて祝福してくれた。
顔は、いつものとおり無表情だけど、多分、そうに違いない。
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