第50話 胸までは成長しなかった
10月も下旬となる頃には、カヤさんの訓練にも体が付いて行くようになっていた。
ただ、ワイナンバーカードに記載されているレベルは訓練では上がったことがなかったのでカヤさんに聞いたところ、あれはあくまで冒険者レベルだということで冒険者レベル=個人の本当の強さ…ではないらしい。
ユーリーの現在のレベルは7で、私のレベルは4。
なお、カヤさんはレベル99で、記載としてそれ以上はないとのことである。
ちなみに個人の本当の強さは、各能力値と保有スキルによって総合的に判断するのだという。
私の現在の各能力値は…それは秘密…。
「思っていたより、お二人とも早く上達されておりますね」
カヤさんの言葉に、私はふふんと鼻を鳴らし腕を後ろで組んで慎ましい胸を張った。
ユーリーは、右手の人差し指で頬を掻きながら照れている。
「そういうわけですので、今日から実戦による戦闘訓練に入ろうと思います」
「カヤさん」
私は右手を上げて言う。
「何でしょう」
「この辺一帯の魔物は、こちらから攻撃しない限り襲っては来ませんが、もの凄く強くて今の私たちでは歯が立たないと思います」
「そうですね。ですので、ここから更に地下に行きます」
「この下は迷宮になっていますので」
そう言って、カヤさんは右の人差し指を地面に向けた。
え!?地下って、この広い部屋だけじゃなかったの!?
「とりあえず、こちらへ」
カヤさんに促されて付いて行くと、程なく彼女は足を止めた。
場所としては、私たちがいつも下りてくる階段の右隣であるのだけれど、カヤさんの視線の先は当然壁しかない。
「トゥルス」
彼女が、そう言葉を放つと見る見るうちに、それは目の前に現れた。
「壁に扉が!?」
驚く私たち二人をよそに、カヤさんはそよ風のような表情をしながら、リング状のドアノブを引いて扉を開ける。
鈍い音を部屋中に響かせながらドアは開き、その先には下へと続く階段があった。
「ここを下りますので、松明を一つ用意して下さい」
「あ、はい」
私は、鞄を開けようとしたが、ユーリーは既に用意していたのか松明を手にしており、それを私に渡してきた。
「ありがとう、ユーリー」
その松明の先端に火の魔法を放つと瞬く間に燃え広がり、それをカヤさんに手渡す。
「では、参りましょう」
そう言って、カヤさんを先頭に階段を下りて行ったのだった。
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