第48話 おっきい
今朝は、朝から城の中庭で作業をしている。
何をしているのかと言えば、それは、5月に植えたサツマイモの収穫である。
「うわぁ、見て見て、これ、すっごく大きいわ」
私は、両手でつかんだサツマイモを頭の上でぶんぶん振り回しながら、少し離れて作業をしているユーリーに見せる。
ユーリーは、私に気付いて手を振り返してくれた。
そして、それを私の近くまで丁度来ていたカヤさんに、掘り起こしたサツマイモたちを手渡し、受け取った彼女はカゴの中に入れていく。
私たち二人がイモ堀り担当で、カヤさんはそれを受け取りカゴに入れて荷台に積む作業をしている。
イモも数が多ければ、重量もそれなりになるのでカヤさんが居てくれて、大変助かった。
「これだけあれば、干しイモがたくさん作れますね」
カヤさんがカゴに入ったサツマイモを一瞥しながら言う。
「そうですね。自分たちで作れば、その分お金が浮くので助かるんです」
そう、前に山賊にお金を取られてしまって少しでも節約する必要があるので、本当に助かる。
もっとも、本来はそれが目当てというわけではなかったのだけれど。
「これくらいで良いかな?」
そう言って、私たちのところにユーリーが腕一杯にサツマイモを抱えながらやって来た。
「そうね。これだけあれば1週間の料理の分と、携帯食の干し芋が作れそうだわ」
今日は天気がすごく良かったので、干しイモを作るには最高の条件だ。
その日は、その作業で一日の大半が過ぎていったのだった。
次の日。
私たちは、薬草採取の依頼品を渡すためにジェンヌの街に来ていた。
「本当に、いつも済まないねぇ」
そう言うのは、時々依頼を出されている方で、私たちにとってはお得意様のお婆さんである。
「あら?そちらの方は、お二人のどちらかのお姉さん?」
「いえ、私はさるお方から使命を受けて、お二人に随身している者でジェラート・カヤと申します」
「以後、お見知りおき下さい」
「これは、ご丁寧にありがとうございます」
「お二人には、いつもお世話になっていて…あら、その服にその刀…和国のご出身かしら?」
「いえ、服も刀も大事な方から頂いたもので、私自身はアストリア侯国の出身です」
和国は東の遠い島国の事で、アストリア侯国はガザン一帯を治めるジェンヌ聖王国の衛星国の一つだ。
ともかく、珍しい剣だとは思っていたけれど、あれが刀、というものだったのね。
そう思いながら、カヤさんの左腰に付けているものに視線を向けたのだった。
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