第47話 この部屋暗すぎ

そして、次の日。


「ユーリーさん。動きが遅いですよ」


今日も、朝から二人の剣の交わる音が部屋中に響いている。

松明が一つになったことで部屋はより暗くなり、ユーリーはカヤさんの剣をギリギリのところで防ぐのがやっとの状態である。

ちなみに、私の魔法を松明の代わりに使用するのは禁止されているが、魔法そのものは禁止されてはいない。


「ファイアボール」


カヤさんの側面を突いての攻撃であるが、彼女は私の方を全く見ることも無く、左手だけでそれを防いだ。


「ならば」


私は、更に回り込み背後から同様にファイアボールを唱えた。

しかし、カヤさんは寸でのところでそれを避ける。


「わっ!」


「しまった!」


カヤさんが避けたことで、ファイアボールはユーリーに当たった、かに見えたが、カヤさんは自身が避けた直後に、左手でユーリーの手を引っ張って自分のところに引き寄せていたため、当たることは無かった。


「危なかった…」


私は、その場で座り込んでしまう。


「…少し、休憩にしましょう」


カヤさんは、そう言って剣を鞘にしまう。

そして、3人で壁伝いに座った。


「マリアさん。背後からの攻撃は悪くないのですが、ユーリーさんと連携を取らなければ意味はありません」


「はい…」


「ユーリーさんも、私の剣の動きを気にしすぎです」

「マリアさんの動きを、全く見ていなかったでしょう?」


「おっしゃられるとおりです…」


松明が一つになっただけで、昨日までとは雲泥の差だった。

これが実戦だったら、とんでもない事になっていたに違いない。

結局、この後も訓練をしたものの、この日は全く成果は無かったのだった。

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