第44話 こんなところに部屋が

二人の剣の交える音で部屋中が響き渡っていた。

今、私たちが居るのは、城の中庭に隠されていた地下への階段を下りた先にある部屋である。

階段の左右の壁には松明がかけられ、ぼうぼうと炎を上げ周囲を照らしているものの、部屋の全貌をうかがい知ることは出来ない。

それほど、その部屋は広かった。


「はぁはぁはぁ…」


まだ、始めてから5分も経っていないというのに、ユーリーの息は大きく上がっていた。

ユーリーの攻撃は、ことごとくカヤさんの剣によって防がれ、そのたびにユーリーの体は大きく左右にいなされ、体力をすり減らされていたからだ。


「これくらいにしておきましょうか」


カヤさんは、そう言って剣を鞘に収めた。

それを見て、ユーリーは満身創痍の震える手で、何とか自分の剣を鞘に収める。


「ユーリー、大丈夫?」


壁にもたれかかり崩れるように座ったユーリーに駆け寄り、水袋を手渡した。


「…ありがとうマリア。大丈夫だよ…」


ユーリーは、少し引きつった笑顔を私に向けて言ったあと、水袋を口に付け水分を補給して渇きを癒した。


「お取込み中のところ申し訳ありませんが、マリア様の実力も拝見したく思うのですが、宜しいでしょうか」


「えっ!?あ、はい。宜しくお願いします」


私は小走りに、大体5mくらい離れてカヤさんと対峙するように立った。


「私は、ここから一歩も動きませんので、安心して魔法を撃って来て下さい」

「あ、力の加減は全く必要ありませんので、全力で撃って下さって結構です」


言われなくても、そうするつもりだった。

ユーリーの仇は、私が取るわ。


「ファイアボール!」


両手の掌をカヤさんに向け、力の限り最大級のファイアボールを放った。

恐らく威力的には、ユーリーに見せた3倍程度はあるはず。

しかし、それはあっさりと彼女が伸ばした右腕一つで防がれてしまった。


「はい。良く分かりました」


カヤさんは受けた右手を見つめながら、眉一つ動かさず無表情な顔でそう言った。

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