第42話 ドヤ顔、久しぶりにしたかも

次の日の朝、いつものように朝食を済ませた私たちは今、城の屋上にいた。

空は青く晴れ渡っていて、城の周囲の木々も鮮やかな緑色を輝かせている。

中庭や城の外で行わなかったのには、当然理由があった。


「す…凄いよっ!マリア」


5mほど先に的として置いた薪が勢いよく燃え上がっている。

私の放ったファイアボールによって。


「ふふん」


私は、両手を腰に足は少しだけ広げて慎ましい胸を張りながら得意ドヤ顔をした。


「こういう事も出来るわよ」


そう言って、今度は人差し指に小さな炎を灯した。


「これなら、マッチが水で濡れてもマッチ代わりに使えるし、そのまま簡易ランプとして使う事も出来るわ」

「とは言っても、魔力を消費するから、あくまで保険に過ぎないけどね」


「いや、それでも十分すぎるほどだよ」

「やったね、マリア」


そう言って、ユーリーは私の両手を包み込むように握り、自分の事のように喜んでくれた。

・・・まさかとは思うけど、その顔、私以外に見せたりしてないでしょうね。


そのあと、何度か試し撃ちをして後片付けをしている最中、街に繋がる街道から土煙が上がるのが見えた。


「誰か、こっちの方に来てるね」


「そうみたい」

「もしかして、昨日おじ様が言われていた方が来られたのかしら」


「そうかも」

「とりあえず、残りの片付けは後にして、そっちに向かおう」


「そうね」


こうして、私たちは手を止めて、城の外まで足を運ぶことにした。

私たちが城の外まで出た時には、既に土煙が間近にまで迫って来ていて、てっきり馬車を走らせているのかと思ったのだけれど、視界に入って来たそれは全く違っていた。

そして、程なく、その人は私たちの前までやって来て足を止めたのだ。


「こんにちは。初めまして」

「私は、ニェボルニェカ様より使命を受け参りました、ジェラート・カヤと申します」


彼女は息を切らせることも無く、眉一つ動かさない無表情な顔で、そう挨拶をしたのだった。

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