第37話 ナイフって美味しいのかしら

ジェンヌの街への帰路も半ばとなった頃、それは起きた。


「そこの二人、馬車から降りな!」


そう、山賊の集団に出くわしたのだ。

人数は10人ほどで、駆け出しの冒険者である私たちが敵うはずもなく、言うとおりに降りる。

そして、山賊の一人が私たちのフードを脱がした。


「うひょ、お頭、エルフですぜエルフ」


「あぁ、そのようだな」

「お前、いくつだ?」


「14よ」


「ちっ!まだガキかよ…」


お頭と呼ばれた男は、そう言って舌打ちした。


「私はもう大人よ!」


「そういうのは、もっとそそる体になってから言うもんだぜ。おちゃん」


私の体をなめ回すように見ながらも直後に肩をすくめながら、その男は言った。

悪かったわね、そそる体をしてなくて。

ママに似たんだから仕方ないじゃない。

そんな事を思っているうちに、盗賊のお頭はユーリーの方に視線を向けた。


「で、お前はいくつだ?」


「13です」


「まぁ、だろうな」

「俺らは一応、ガキはヤらねぇ主義でな。助かったなガキ共」


そう言って、山賊の頭はユーリーの肩に手を当てた。


「だが、有り金と荷物は全て頂いて行くぜ」


「ちょっと待って!」


「あ?なんだ嬢ちゃん」


「馬車と購入した壺は置いていって」


私の言葉に、山賊たちは全員大声を張り上げて笑い出した。


「エルフのお嬢ちゃん、なーんも分かってないのな」


山賊の一人がナイフをなめながら、そう言った。

舌を切らないのかしら。


「俺達ゃあ、山賊だぜ?」


「見れば分かるわ」


「分かってねぇな。俺達じゃなきゃ、お前らはあの世送りか奴隷商人に売られるかの、どちらかしかーんだぜ?」

「それを、今持っている財産だけで許してやるっつーわけなんだわ」


と同時に、その男はナイフで私の喉を突いた。

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