第36話 ピザが食べたいの
それからというもの、私たちはとにかく買物や採取の依頼を受けまくった。
採取は基本的に城の奥にある丘、そして、依頼人にサインを貰うついでに街の中で完結出来る買物を受けていったのだ。
そうこうしているうちに3か月が過ぎて、今は8月中旬。
城の中は石で出来ているおかげで洞窟の中のようにヒンヤリと涼しいものの、一歩城から出れば途端に汗が衣類にしみ込んでいくほど暑くなっていた。
「あー…あれから5着買っていて良かったぁ…」
御者をしているユーリーの左隣で、左手でぱたぱたと顔を仰ぎながら言う。
馬車の荷台には着替え用として2着用意している。
「そうだね。今年は思ったより暑くなっているよね」
「これでも、ずっと南の地域に比べたら涼しい方らしいけどね」
私たちが住む地方は、冬こそ雪が降ったりするものの、そのぶん夏は冷涼で過ごしやすい、らしい。
そして今、私たちは買物の依頼で対象物が売られているという、ジェンヌから南東20kmに位置するナプリに向かっていた。
「あと、どのくらいで着くの?」
「うーん…あと20分くらいかな」
「うへぇ…まだ、そんなにあるんだぁ…」
体の後ろに手を付けて、空を見上げながら足をぱたぱたとさせる。
ユーリーはもう少しだからと、なだめながら苦笑いをした。
彼の言うとおり20分程で街に到着し、入り口で検問を受けたあと街中へと入って行く。
あ、もちろん、着替えは事前に済ませているわ。
「とりあえず、お昼よ、お昼!アリシアさんから聞いたところに行くわよ!」
街に入った途端に目を輝かせながら、私はユーリーに迫った。
「うん、そのつもりだったから大丈夫だよ」
笑顔でユーリーは、そう答えた。
そうして入ったレストランで、初めてピザと呼ばれているものを食し満足したあと依頼の買い物を完了させた。
あとは意気揚々と、ジェンヌの街に帰るだけだった…のだけれど…。
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