第27話 パパは嘘つき

「あのね、ユーリー」


私は、朝食後に飲んでいるコーヒーのカップに目を落としながら言う。


「どうしたの?」


「あのね…。私もしかしたら子供が出来るかも知れない」


「…えっ?」

「どういうことなの?」


ユーリーは、明らかに困惑した表情を浮かべる。


「私たち、ほぼ毎日同じ布団で寝てるじゃない?」


「そうだね」


「男女が同じ布団で寝ると、子供が出来るじゃない?」


「えっと…マリア?」


「なに?」


「一緒の布団で寝ただけでは子供は出来ないんだけど…」


「え?そうなの?」

「でも、パパもママも毎日同じ布団で寝ていたし、それで私が生まれたのよ?」


「あ…うん。それは、そうかも知れないけど、それだけでは出来ないんだよ」


ユーリーは、困った表情をしながら私から目を逸らす。


「ユーリーは、どうすれば子供が出来るのか知っているの?」


「あ…うん…まぁ…ね…」


「教えて!ユーリーっ!」


私は、テーブルを両手で押し当てて立ち上がりながら、そう言った。


「えぇっ!?いや、無理だよっ!無理無理っ!」


ユーリーは、両手をぶんぶん振り回しながら、慌てたように言う。


「とにかくね…大丈夫だから…その…もし、どうしても気になるなら、今日から別々の部屋で…」


「それは嫌」


間違っても一人で寝るのが怖いからとか、そう言う事ではないわ。


「うーん…じゃあ、マリアのベッドを僕のベッドの隣に置いたらどうかな」

「そうすれば、同じベッドで眠ることもないし」


「それ良いわね」

「あれ?でも、今何か重要な事を話していたような気がするけど…」


「気のせいじゃないかな…」


ユーリーは人差し指で頬をきながら、再び目を逸らした。


「まぁいいわ。それじゃあ、この後から早速作業にかかりましょ」


こうして、今日の午前はベッドの配置換えをすることになったのだった。

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