第12話 これぞローブよ

今回、街まで来たのは当然食事をするためではない。

レストランを出た私たちがやって来たのは、武器や防具のほか冒険に必要な道具を扱っているボッタクル商店。


「凄い…たくさんの商品があるわね」


ユーリーによると、全てが新品というわけでなく、冒険者が宝箱などから得た戦利品を買い取ったものも販売しているのだという。

状態の良いものは新品と同様に扱い、あまり状態の良くないものは投げ売りコーナー行きになるらしい。


「あっちが魔術師向けの武具だよ」


ユーリーは指差して言う。

そこへ行ってみると、魔術師向けとはいえ結構な品ぞろえだった。

魔術師と言えば黒いローブを着ている、程度にしか思っていなかったのだけれど、そのローブですら色やデザインが無数にあった。


「赤や白も捨てがたいけど、やっぱりまお…魔術師と言えば黒かしら」


「それなら、あそこの一角だね」


ユーリーは店の端っこの方を指差す。

なんでも、黒はもう時代遅れで人気が全然無いらしい。


「その割に金額は変わらない気がするけど…」


「そうだね」

「確かに普通・・の冒険者にはあまり人気は無いんだけど、ごく一部の特定層の冒険者には絶大な人気があるらしいよ」


「へぇ…って、それだと、私もその特定層に該当するってことじゃないの?」


「うーん、マリアは違うと思うよ」

「単にイメージ的に黒を選んだだけだからね」


「そう?ならいいけど」


これ以上余計な事を聞いて、自分も特定層に該当してたというのも嫌なので、この話題を終えることにした。


「うーん、これも捨てがたいわね…」


どれにしようか迷っていると、ユーリーは一着のローブを手に取った。


「これなんかどうかな」

「襟や袖の先などにシンプルながらも模様の刺繍が入っているよ」

「内側の羽毛袋が取り外し出来るから、季節を問わずに使用できるし、いいんじゃないかな」


そう言って、私にそのローブを見せてきた。


「うん。いいんじゃない、これ」


まじまじと見ながらそう言った後、カートにそのローブを入れた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る