第10話 ほんの少しだけペロペロした

アリシアさんは、最後の処理をするためにカタカタとキーボードを叩いている。


「はい、これで手続きは全て完了いたしました」

「冒険者カードにつきましては、1週間程で簡易書留にて郵送されますのでしばらくお待ち下さい」

「本日は、ご登録いただき誠に有難うございました」

「末永く、当ギルドを宜しくお願い致します」


画面上で深々と頭を下げ、再び顔を上げると営業モードは終了したらしく、いつものアリシアさんに戻った。


「それで、マリアちゃん。本当に魔術師でいいの?」


「ええ、構いませんわ」


「そう…。まぁ、ニーニャさんが旅行に出掛けられる前にこちらギルドに寄られたのだけど」

「その時に、マリアちゃんが魔術師になるって言いだすだろうけど、そのまま受け付けてほしいって言われたのよ」

「まさか、本当に魔術師として申請して来るなんて思ってなかったからびっくりしちゃって」


心底驚いたようにアリシアさんは言った。

どうやら、ママの掌で踊らされていたようだ。

ママにどのような意図があるのかは分からないけれど、私はこれも運命だと思った。


「私は必ずまお…ぅんぐぐっ!」


そう言い終わる前に、ユーリーによって私の口は塞がれた。


「まぁ、何かあったら遠慮なく相談してね」


「はい、ありがとうございます」


そう答えたのは、口が塞がっている私ではなくユーリー。


「うふふ、相変わらず仲が良いわね」

「それじゃあ、またね」


こうして手続きも完了し、晴れて正式に【魔術師】となった。

うーん、通り名は何にしようかしら。

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