第2話 たまらん

「マリア様、本日より宜しくお願い致します」


そう言って、私の前に現れたのは幼馴染のユーリー。

彼は、パパとママの古くからの友人の子で、私より一つ年下の13歳。

今年、元服を迎え形式上は成人になったのだけれど、身長は私より低いし顔もまだまだ幼い。

普通に可愛い子ではあるのだけれど、私のような美少女には到底釣り合わない。

まぁ、ユーリーがどうしても付き合いたいって告白して来たら考えなくもないけどね。

あくまで考えてあげるってだけなんだから、勘違いされても困るのだけれど。


「ユーリー、前にも言ったことあるけど、二人きりの時は呼び捨てで良いわ」

「あと、敬語も止めて。他人行儀みたいで好きじゃない」


何故だか分からないけど、ユーリーの父母は私に対して敬語を使うように教育しているらしく、ある時を境によそよそしい態度を取るようになっていた。


「え…でも、僕とマリア様とで…」


バンッ!


私は、思いっきり右の掌で壁を叩く。

手のひらがジーンと痺れて、めっちゃ痛いのを我慢しながら彼の顔をじっと見つめる。

私と壁に挟まれた形になったユーリーは、頬を朱色に染め目を逸らしながら口を開いた。


「わ…分かったよ…マリア」


私は非常に満足そうに笑った。

しかし、その直後のユーリーの何とも言えない顔から想像するに、人に見せられるような顔では無かったに違いなかった。

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