マリア様は魔王になりたい - Crimson World Mars III - 

福田牛涎

第1話 魔王に決めた

私はつい今しがた魔王城の主となった、ぴっちぴちの14歳の美少女。

名前は遥か昔、聖女と名高かった方と同じマリア。

聖女と同じ名に相応しく、長く美しい輝きを放つ銀髪に、エルフとして高貴の証である細く長い耳、色白の美しい肌、宝石のようなエメラルドグリーンの瞳を持つ、本物の中の本物の美少女。

それが私。

一目見れば誰もが私に恋をするし、その証拠に同世代の男子で私に告白をしなかった者は居ないわ。

もっとも、実際に告白してきたのは一人だけだけど、隠れ告白も含めたら全員告白しているはず。


ともかく、そんな完璧とも言える私に大変なことが起きてしまった。

パパとママが、今更ながら長期新婚旅行へと出掛けてしまったのだ。

朝起きてパパの作る朝食を楽しみに居間に行くと、テーブルの上にはパパ特製の朝食に代わって市販の総菜パンを重しとした一枚の紙が置かれていた。

その紙には、こう書かれていた。


『パパと一緒に3年ほど新婚旅行にいってくりゅ♡』

『一人ぼっちだと夜がこわこわなマリアのために、ユーリー君の両親と話し合って彼を旧魔王城そこに住まわせることにしたけど、誰も居ないことをいい事に間違いだけは犯さないでね♡』

『最後に、旧魔王城そこの管理を任せるけど、城の主になったからといって魔王になろうとか考えちゃ駄目だよ?』

『そんなことしたら、激怒ぷんぷん丸だからね』

『んじゃ、あとはよろしくー』


私はプルプルと震えながら、手に持っていた手紙をくしゃくしゃにした。


「ふ…ふふふふ…それじゃあ…なってやろうじゃないの、その魔王とやらに!」

私は握りこぶしを天上に上げ、そう宣言した。

間違っても、旅行に連れて行ってくれなかった腹いせに魔王になろうだとか、そんなことは思ってない。

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