投降

 倒れる父上の傍らで。


「敵将ッ!討ち取ったりぃぃぃぃぃぃいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」

 

 小さく息を吸った僕は、そのまますぐに勝利宣言を叫ぶ。

 敵にも、味方にも、聞こえるように。


「勝鬨を上げよっ!我の勝利であるっ!喝采せよっ!我の勝利であるっ!」


 そして続く言葉。


「「「うぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!」


 それを受け、砦の方にいる多くの味方の兵士たちが喝采の声を上げる。


「ルノ様ァ、万歳ッ!!!万歳ッ!!!ばんざぁぁぁぁぁああああああいッ!!!」


「……そ、そんな……あの、狂人が」


「ま、負け、た」


「……ありえない」


 味方が歓声の声を上げている傍らで、絶望の声を上げているのは敵兵である。

 父上は祖国を裏切ったものであり、敵兵の中でもあの男は裏切りの末に自分たちへと与した男。

 この場にいる敵兵のほとんどが父上とは何の関係もない者たちだ。

 だが、そんな中でも敵兵の心の拠り所は間違いなく父上だっただろう。

 狂気こそが支配者となる戦場において、狂人たる父上こそが敵兵の中心であると断言できる。

 あの男がいたからこそ、我らは勝てるのだ。

 英雄とは、周りにそう思わせてことであり、我が家の人間はそれが出来る類の者たちであった。


「……僕は、押しに弱いと思っていたのだけど」


 案外、僕もラステラ家に毒されているということだろう。

 思えば、ここ最近の僕は周りを自分の流れに持っていてばかりだな。


「さて」


 そんなことを考えながら、僕は静かに敵兵の方へと視線を送る。


「投降するかい?投稿するならば、手厚く扱うような真似はしないとも。僕は父上のような狂人とは違う」

 

 そして、僕は魔法で自分の声を響かせながら敵兵へと投降を呼びかける。


「「「……ッ」」」


「既に、こちら側の軍では再侵攻を行う準備が出来たようだが……また、補給の要である砦を奪われてのゲリラ戦をするかい?父上以外にも覆せる手札はあるかな?」


 その言葉の中に脅しを混ぜながら。

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