魔法

 剣と剣。

 次は魔法と魔法だ。


「相変わらず器用なことだっ!」


 父上の出す蒼き炎に対して、僕は水で洗い流し、水で爆発させてなかったことにしたり。

 水だけじゃない。時には石の壁で防いだり、酸素だけを省いた風を叩きつけて沈下させたり。

 ありとあらゆる手段でもってその勢いを殺していく僕を見ながら父上は感嘆の言葉を告げる。


「それはありがたいね」


 僕はそんな父上の言葉へと素っ気なく答えた後、反撃として大量の魔法を飛ばしていく。


「はっ!器用なことでっ!」


 それらをすべて器用に避けていく父上。

 だが、僕の魔法は確かに父上の身体の幾つかを切り裂いて傷を作る。


「ルノぉーっ!俺と押し合うだけの気概はあるかーっ!」


 父上はそんな中でも再度、炎を展開して僕の方に叩きつけてくる。

 

「ふんっ」


 それに対してこちらも蒼い炎を燃え上がらせることで対抗する。


「純粋な魔力の押し合いで負けるつもりはないな」


 確かに、僕の魔力の量にそこまで余裕があるわけじゃない。

 ならば、ただ細くすればいいだけの話である……際限なく細く、貫通力を高めて。


「ずらしたか」


 父上の蒼き炎を貫いて一刺しした僕の魔法は父上の心臓があるべき場所を確かに打ち抜いた……しかし、僕の敵を殺した感触はなかった。


「あぁ、そうだとも……便利だよなぁ?人体ってのは心臓を少し、ずらしてやればそこを貫かれても死ぬことはない」


「狂人が」


「にしても、いいぞぉ。まさか、ここまでお前が強くなるとは。あぁ、実っていく。俺の子が、更に強く、我が家に染まっていく」


「……」


 僕は狂気をまき散らす父上の圧力を上から叩き潰すように自分の圧力を高めながら睨みつける。


「さぁ、死合おう。踊ろう。最後の時まで」

 

 父上はゆらりと動き出し、胸から血を垂れ流しながらこちらへと突貫してくる。


「ぐっ……ッ!」


 そして、再びぶつかり合った僕と父上。

 父上の蒼い炎を纏った拳と僕の貼った結界がぶつかりあい、甲高く大きな音を世界に響かせる。



「───ラステラ家の親は本来、子に殺されるべきなのだ」



 人の声をかき消すほどに大きく。

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