父上
互いに剣を持ち、鍔迫り合いをしているのは実の親子。僕と、その父上であった。
「……ッ」
「はっはっは!顔が怖いぞっ!ルノォ!」
顔を強張らせる
「ふっ」
それに対して、強張らせていた表情を、自然に笑みへと変えながら僕は口を開く。
「貴方こそ、恐怖しておられるのですか?父上……恐怖で、良く口が回っておられるようですが」
「良く……ッ、言うじゃねぇかぁっ!」
互いに一歩も引かず、剣と剣をぶつける僕と父上。
「ふっ」
そんな中で僕は力を抜くことで父上の態勢を崩しにかかる。
「おっと」
それを受け、父上も素早く反応。
自然な身体の動きで自分の態勢が崩れないよう、構え直そうとする。
「吹き飛べ」
だが、僕の主目的は父上の僅かな隙を作り出すこと。
父上が構え直そうと動く……その間に出来た僅かな隙へと狙いを済ませて一撃。
僕は父上の腹へと風魔法を叩き込む。
「アッハッハッハッ!!!良いぞォッ!良いぞォッ!」
それを受けて吹き飛んだ父上は。
狂ったような嗤い声を浮かべながら立ち上がって声を響かせる。
「頭イっているとは思ったが、ここまでではなかったろうが」
僕は心底楽しそうに笑う父上を前に言葉を吐き捨てながら体から力を抜いて自然体で立つ。
ここで決まる。
「ふっ」
「ハッ」
その予感が僕の中にあった。
「「くくく……」」
僕と父上は互いに余裕を崩さず、自然体でゆっくりと歩き始める。
近づいて、近づいて、近づいて、
「「……」」
互いに目と鼻の先という場所に来てもなお動かない。
ただ、静かに向き合い続ける。
余裕を崩すな、周りを呑み込め、目の前の男に負けるな、すべての人間の意思を己の中に転がし、士気を操れ。
僕と父上。
ここのぶつかり合いで勝った者こそがこの戦場における勝者である。
「それでいい、それでこそラステラ家だ」
「我らは何ぞや」
「万世をくらう牙なり」
短い僕と父上の応答。
「……ッ!」
「ラァっ!!!」
そして、それが終わると共に僕と父上は互いに動き出すのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます