敵を切り裂き、敵を荒す。

 

「退却っ!退却っ!」


 その果てで僕は退却を命じて、撤退を始めていく。


「僕がぶち抜くっ!」

 

 砦に戻るまでの道のりを作り上げるために僕は魔法を発動させて敵兵を薙ぎ払って一つの道を作り上げる。


「ひけっ!!!」


 そして、僕の作った道に己の騎士たちが流れ込んで撤退していく。


「あっ!?」


 そんな中で騎士の一人が攻撃を受けて横転。

 地面に転がっていく。


「……ルノ様っ!?」


 それを受けてすぐさま僕は反転。

 自分の乗っていた魔導自動二輪を乗り捨てて地面を駆け抜け、地面へと倒れた者の元へと向かう。


「逃げろっ!」


 そして、僕はその彼のことを掴んで投擲。

 何処かへと飛んで行った僕を置いてどんどんと先に進んでいっている魔導自動二輪の上へと乗っかる。


「逃げている奴はもう捨て置けっ!とりあえず本丸だっ!」


「あの化け物を全員で囲って殺すぞっ!」


「野郎どもぉぉぉぉぉおおおおおお!最高の敵だっ!最も俺たちが倒すべき敵が来たぞぉ!こいつを倒せば俺たちの勝ちだ!」


「たった一人でのこのこ前線に残りやがって……」


 生身一つ。

 それだけで敵陣へと取り残された僕を敵兵は取り囲んでいく。


「……良し」


 このまま逃げ帰るのというのもダサいだろう。

 ついでだ。

 ここで、敵の士気を砕きに行こう。


「……すぅ」


 自分の配下を逃がすこともできるし。


「はぁー」 


 呑み込め。


「ァァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」


 すべてを呑み込め。

 自分の流れに相手を引き込め

 相手を己の押しでどこまでも押し流せ。




「それでこそ俺の息子だ」




 奪い合う。


「……ぁ?」


 僕の振るった剣は敵の雑兵として紛れ込んでいた一人のフードを被った男に止められる。


「よぉ!久しぶりだなぁ、ルノ……っ!」


 己の剣を防ぐなど、普通ではない。

 そう確信する僕からの視線を受けて、男は笑みを浮かべながらゆっくりとフードを取る。


「……っ、父上!?」


 フードの下に隠されていたその素顔。

 それはまさしく僕の父上その人であった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る