籠城
それから、始まるのは籠城の日々である。
ルイス辺境伯領の方からやってくる敵兵に、森の方からもやってくる敵兵。
360度囲まれているような状態の中での籠城……当然、敵からの攻撃は苛烈の一言である。
『急襲!急襲!敵部隊が方へと接近中!至急対処すべし。繰り返す!敵部隊が我が方へと接近中!至急対処すべし』
籠城開始から三日目。
僕は今日もいつものように仮眠をとっていたところに響いてきた声に叩き起こされる。
籠城中の三日間。昼間での戦闘は当たり前。
それだけでなく毎日のように夜襲も行われていた。
「ラステラ侯爵閣下!おはようございます!今宵もよろしくお願いします!」
「了解だよ」
のそのそと起きていた僕はリノが率いていた部隊の人間に敬礼されながら城壁の方へと登っていく。
「すぅー」
そして、僕がやるのは撃退行為ではなく撃ち落とし。
相手の魔法が発動するより前に相手が発動しようとしていた魔法を撃ち落とす役目である。
「……多いよ、多い」
僕は嫌になるほどの敵の数。
戦術級の魔法使いもわんさかいる中で、夜襲を受ける僕はうめき声を上げながら敵の魔法を杖の一振りでキャンセルしていく。
この魔法発動のキャンセルは魔力の消費が抑えられる代わりに、疲れるのだ。
「……んっ」
だが、それでも疲れたからといった理由で僕がサボるわけにもいかない。
部下たちは数が足りない中でも必死に最前線に立って戦ってくれているのだ……指揮官である僕が早々に折れるわけにはいかない。
「ふわぁ……」
僕は大きなあくびを浮かべながら杖を振っていく。
ちなみに、リノは僕と反対側の方面で同じようなことをしているはずである。
「……いつまで、籠城することになるだろうなぁ」
この砦を取り囲んでいる間、相手の補給は常に圧迫され続けている。
奇襲ならともかく、補給までも山越えさせるのは流石に無理だ……故に、ここでどれだけ止められるか。
それによって、味方の動きは大いに変わってくるはず。
さすれば、いつしか僕たちの籠城も終わるだろう。
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