ラステラ家

「目覚めやがったか」


 ラステラ家が長男にして現当主、ノア・ラステラ。

 それが動き出したことを空気で感じ取った男が一人。


「……とうとう、俺の息子も上に立ったか」


 自分の率いる者たちが、少数で大量の軍勢に絡みついて貪り尽くしている中で淡々と独り言を漏らしていく。


「俺らラステラ家は上に立ってこそ、覚悟を決めてこそだ……押され弱いお前がその殻を破り、上に立った時にこそ真の力となる。俺たちの一族は特別。ただただ戦場に生き、ここでこそ輝くバケモンだ。生まれたときからお前はちょっとだけ俺たちの一族とは離れていたが、間違いなくその血を引いている。俺の敵に相応しい」


 男は笑う。


「やはり行くか、己の女を助けるために、最も激しか戦地に」


 男は嗤う。




「あぁ」



 

 男は感嘆を漏らす。


「あぁ、楽しみだ。やはり、最高に楽しいのは、俺たち家族でやり合っているときだよなぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああ!!!」


 どうしようもないほどの戦闘狂であるノアの父。

 アングリフ・ラステラは一人、戦場の中で狂気的な笑みを浮かべるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る