殲滅
深い、深い森の中で。
「クソっ!クソったれ……こんな、こんなところでぇ!」
「逃がすなっ!そっちに逃げたぞ!確実に殺せ!殺せ!」
「相手は既に弱っているぞ!逃げ腰の豚ともに負けるなよぉ!」
「お父さぁん!おがぁざんっ!!!」
「いやぁぁぁぁぁぁ、来るなっ!来るなよ!」
人々が命を懸けてぶつかり、大量の血肉を肥料として大地にぶちまけていた。
「……」
自分の部下が既に逃げ腰の敵兵を虐め抜き、攻撃している様を僕は上から静かに眺める。
僕たちが攻撃を始めて二日目。補給を断たれ、大した備品もなかった敵の兵士たちはたった一日。
水も食料もなしで過ごすことになってしまった敵兵はもうすでに弱々しい。
もうすでにこちら側のワンサイドゲームであった。
「掃討完了」
「備品を引きずり出せ!出来るだけ多くの備品を奪ってやるんだ!」
「狩り時だぞ!お前ら」
「補給部隊の位置を補足するぞ!」
僕はいつものように死体漁りを始め、金目もの並びに何か役に立ちそうなものを探している自分の騎士たちを放置しながら僕は一人、今後の戦略を練っていく。
「このまま押し切れるだろうか……」
敵の数を減らせさえすればとりあえずは良い。
僕たちが龍骨山脈唯一の谷間に建てられた砦を完全に掌握し、そこまでの補給の道を作れるまで。
安全に龍骨山脈唯一の谷間に建てられた砦でルイス辺境伯領側からの攻撃に耐えれるほどに、後顧の憂いを断てれば。
「既に、退路はあるか」
もうこの森を支配しているのは我らの方である。
リノたちは安全に退却できるだろうし、補給線を圧迫しない程度に彼女の方に増援も送っている。
三日間堪え、その後に退却することも問題なく出来るだろう。
「ふぅ……そろそろ、夜か」
既に太陽はほとんど沈み、時刻としてはそろそろ夜に入ってくる。
「みんな!野営の準備!今日のところも僕たちは夜襲を行わずに寝るよ!夜襲は周りの面々に任せる!」
「「「ハッ!」」」
部下たちは僕の命令に素早く頷いて各々作業を始めてくれる。
「……ぁ?」
そんな中で、僕は何か嫌な予感を感じて、足を止めて視線を上空へと向けるのだった。
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