掃討戦

「さて、みんな……リノが一生懸命に時間を稼いでいる間に頑張ろうか」


 リノを活用した奇襲作戦。

 それは無事に成功し、龍骨山脈唯一の谷間に建てられた砦を占拠したとの報告をリノ本人から受けた。

 これで相手の補給は切れた。


「みんなはもう知っていると思うが、リノの部隊は長く占領しているため部隊じゃない。長く占拠するなど無理だ。三日間。それだけの間を占領する手筈になっている。それ以上の占領は不可能……この間にどれだけ僕たちがゲリラ部隊を蹴散らかせるかにかかっている。みんな、頑張っていこうか」


 リノによる奇襲作戦の後は各自、いくつかの部隊に分かれての各個撃破である。

 僕はラステラ家に仕えている騎士たちと共にゲリラ部隊の殲滅に当たることになる。

 そんなこんなで僕は今、自分の騎士たちの前に立って今後の動向について語っていたのだ。


「「「……」」」


「終わりだよ?」


 だが、僕が自分の言葉を終わらせても部下のみんなは不満そうにこちらへと視線を送ってくるだけである。

 まだ、何かあるだろう……そんな無言の圧を感じる。


「……やっぱり、何時ものをするかないか」


 何故、みんなが不満なのかはわかっている。


「我らは何ぞや」


 いつもの、ラステラ家が戦いに赴く際に告げる言葉を求められているのだろう。

 僕は周りからの期待に負ける形で口を開く。


「「「我ら、ラステラの剣!万物を打ち砕く剣なり!」」」


「我ら何ぞや」


「「「我ら、ラステラの剣!万物を打ち砕く剣なり!」」」


「よろしい、ならば行こう。敵を打ち砕くために」


「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」


 自分の言葉にうちの騎士たちが満足そうな表情で大きな声をあげているのを前に、僕は苦笑しながらそれを眺める。

 この口上は基本的に当主の者が告げるものであり、僕は未だにこれを告げるのにはまだ少なくない抵抗があった。

 まぁ、言うだけで士気もあがって、相手に威圧感も与えられるなら言うだけ得な気もするけど。


「いい加減、ルノ様は自分たちの当主だということを認めてくださいよ!」


「えぇ。そうですよ。私たちはルノ様を旗印に集まっているのですから」


「むしろ、ルノ様以外の当主なんて想像できませんよ!」


「えぇい!うるさいよ!どうせみんなに向けて話したのだし、それで許してよ。ほら、それじゃあ攻撃を開始するよ!」


 僕は自分に向けて口々に告げる部下たちの言葉を散らし、こちらの命令を伝えるのだった。

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