奪還
何処までも広がっている草原。
そんな草原ではあるが、龍骨山脈の方へと近づけば近づくほど徐々に木々が多くなってその場が森へとその姿を変え始める。
そんな中で、ルノたちの敵軍が選択したのは森でのゲリラ戦。
自分たちが潜伏している間、龍骨山脈唯一の谷間に建てられた砦から送られてくる補給を頼りにしてのゲリラ戦を展開し始めたのだ。
「敵の意図がわかりません。あまり、意味のある行為だとは思えないのですが」
ゲリラ戦は確かに強力ではあるが、それはあくまで防衛線のみ。
攻撃においては決して強力とはいえない。森に引きこもってただ敵のアクションを待つことしか出来ないからだ。
ましてや、敵地で行うものなどでは決してない。
補給を常に危険へと晒しているような状態であるからだ。
「……」
だが、非常に面倒であることには変わりない。
「ふふっ……ルノ様が任せてくださったのですし、うまくやるとしましょう」
あまり時間をかけたくないルノは早々に相手との決着をつけるため、リノと別れることを決断。
彼女に僅かな手勢を託して龍骨山脈唯一の谷間に建てられた砦を占領するように頼んだのだ。
「……ルノ様ぁ」
奇襲を意識するため。
わざわざ一般兵に偽装して進むリノはその胸に秘める牙を研ぎ澄ませながら龍骨山脈唯一の谷間に建てられた砦の方に向かっていく。
今も、敵軍の方はリノが後方の指令室にいると誤認してくれているだろう。
「……リノ様。敵に気付かれています」
「このまま先へと突っ走りましょう。どうせ、向こうはさしたる攻撃をしてこないでしょう。本格的にはぶつかるのは砦付近になるはずです」
リノたちの一団は彼女ではない、別の男を旗印として散発的な弱々しい攻撃を受けながら龍骨山脈唯一の谷間に建てられた砦に向かって一直線に向かっていく。
「私たちは敵の様子を図るための強行偵察部隊だと思っていることでしょうし……相手も砦付近の強大さを覗き見せたいところでしょう」
「……わかりました。ですが、本当におひとりで大丈夫ですか?私たちはあくまで強行での偵察を行う部隊であると偽装どころか、そのように動いていますので、戦闘には参加できませんが」
「問題ありません。私一人ですべてをねじ伏せてみせます」
「……わかりました。ですが、何かあったらすぐにお逃げください。御身の存在を知っているのはこの一団の中でも私だけなのです。部隊全員で守ることはできませんので」
「心配性な子ですね。ですが、良いでしょう。無用な心配ですが、貴方の言葉に頷いておきます」
リノはその胸に秘めた強大な牙を研ぎ澄ませながら進んでいくのだった。
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