呼び出し

 適当に頑張ってとのエールを送った僕。


「もー!とりあえずって何ですか!?とりあえずとは……ッ!」


 そんな僕の言葉に対してリノは不満げに声を上げてこちらへと突っかかってくる。


「私は一生懸命頑張っていたのに……まさか、ルノ様が異常性癖者だったなんて、まさかの出来事すぎて私も困惑しています」

 

 二十歳の相手を好みとしていただけで異常性癖者扱いされるこの世界が怖すぎる。


「まぁ……落ち着いて欲しいな?」


 敬語な時のリノには珍しく感情を表に出している彼女に僕は苦笑しながら落ち着くように促す。


「素直に困ります……私は今すぐにでもルノ様の寵愛が欲しいのです。異性としての寵愛が。それが二十歳になるまでお預けなど嫌です」


 リノは嫌そうに表情を歪めながら言葉を漏らす。


「あっ!そうです。私が魔法で体を大きくするわ


「そういうことじゃないんだよ」


 たとえ、魔法で見た目を変えたとしても変わるものじゃない。


「難儀、難儀です……!異常性癖者のこだわりは!」


 晩婚化が進み、三十代で結婚することが半ば常となっている今の日本に必要なのはリノのように十代を好まないものを異常性癖として罵る心なのではないだろうか?

 異世界、異文化……非常に難儀である。

 

「一先ず、ルノ様は私以外を絶対に見ないでくださいね?ルノ様が犯罪者製造機の異常性癖者なのが悪いのです。ですので、私に魅力がないわけじゃないのでダメです。私の母は体つきもいいですし、同年代と比べたら今の私もダイナマイトボディです。必ず、将来は気持ちよく満足させてみせますので、今は駄目です。他の女を見るなんて駄目です。興奮するなどもっての他。大きくすることも禁止です。


「えっ?い、いやぁ……」

 

 浮気するな、ならともかく勃つのも禁止はあまりにも厳しすぎるのではないだろうか?


「……浮気ですか?」

 

 歯切れの悪い僕の態度に対して一気に視線と表情が氷点下にまで落ち込んだリノがこちらへと掴みかかってくる。


「あっ、ちょ!?」


「……やはり、調教が必要かもしれません。私はこれから未婚者と未亡人を殺しますので、その後に残るのは人妻です。そんな中で興奮するのはありえないことであり、私個人の感情ではなく国として」


「待て待て!?とんでもないこと言っているから!行き遅れにも人権を!」

 

 僕はリノと取っ組み合いをしながら言葉を交わす。


『ラステラ侯爵閣下並びにリノナーラ第二王女殿下。お休みのところ申し訳在りませんが、今後の作戦を立てたいため、会議室へと来てくださると幸いです』


「……むぅ」


「良し!行こうか、仕事の時間だよ」


 そんな中で聞こえてきた伝達魔法の声、それを受けて僕たちは一時的に休戦するのだった。

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