空挺降下

 僕が数多の戦術級の魔導士と激闘を繰り広げ、その後に彼らが逃げる殿として戦闘させられた魔導士を全滅させ、視線を地上へと向けた僕は理解する。


「……そういうことか」


 彼ら、戦術級の魔導士が僕を狙い撃ちし、足止めを行っていた理由を。


「完全に抜かれてしまっているな」

 

 戦術級の魔導士と戦闘をしている間、僕は制空権の維持は出来ていないかった。

 その間に、自軍の内部へと敵の部隊が空挺降下で降ろされたことによって、混乱が続いていた。

 戦術級の魔導士を、我が国の方は未だに対して用意できていない。

 うちの国は貴族権が他国と比べても高く、戦争が起きても貴族たちの参戦を促し、彼らが保有している戦術級の魔導士を提供してもらうには時間がかかるのだ。

 それでも。そんな状況においても質を僕一人で賄っていたのだが……僕一人が動けなくなるだけでここにまで落ちてしまうか。

 

「まっずいなぁー」


 戦争なんて結局は士気が全てだ。

 たとえ、どれだけの兵力差があろうともただ一人の英雄が前に立ち、周りを鼓舞しながら戦うだけでひっくり返せることなど多々ある。

 戦争とは、戦力よりも士気が勝敗を決めるのだ。

 これは、何も魔法があるこの世界だからではなく、前世であっても同じだ。

 世界の歴史を見れば少数が多数を打ち破ることなど幾度も起きている……まぁ、第二次世界大戦辺りからは武器が強くなりすぎて士気ではどうしようもなくなったところはあるのだが。


「うーん」


 それはそれとして、話を戻すと我が軍だ。

 長きに渡る防衛線の果てで、ようやく出れた攻勢。祖国を取り戻すために戦い、力強く前進していた。

 だが、そんな高揚感はたった一回の反撃に驚き、脆く崩れ去ろうとしていた。


「父上は何をしたんだが」


 それに対して、何故か敵は異様なまでに士気が高い。


「こちら、ルノ。前線の状況は分かっている?」


 とりあえずの戦況把握を終わらせた僕はリノにまで連絡を飛ばす。


『えぇ、わかっています。それで?どう思いますか?』


「時間稼ぎだろうね。空挺部隊も、今最前線で攻勢を仕掛けている連中も全部捨て駒。その奥ではちゃんと主力が撤退を続けている」


 僕の観測できる中では、相手はちゃんと撤退も続けている。

 本当に一部の敵が攻撃に出ているだけである。


『……仕方ない、ですか。ひとまずは進軍を止め、相手を殲滅することにかけた方がよさそうですね』


「……そう、かな。うん。こんな状況で進軍したってうまくいくものもうまくいかないだろう。ひとまずは敵の殲滅に集中した方がいいかもね」

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