傭兵
十歳という圧倒的な若さで当主になってしまった僕が周りの人間から舐められるであろうことは予測済みである。
だからこそ、僕はあえて何をされても決して動揺することなく、広い心で対応する判断を取った。
舐められることは端から受け入れ、最低限喚くだけの子供ではないということを示すことを念頭に置いて動いていた。
「……年齢が逆にうまく働いてくれたな」
そんな思惑で動いていた僕ではあるが、周りの人間が勝手に過大評価してくれたのか、想像以上に金と物を集めることが出来た。
これならば最低限戦いには参列出来るだろう。
「……うぅ。許せません。ルノ様は誰よりもカッコよくて、当主として何の問題もなく己の力を発揮できるのです。それなのに、他の人たちから軽視されるなんてあっちゃいけないのです」
だが、そんな僕の横で納得がいかないと言わんばかりにリノが不満を爆発させていた。
「……いや、十歳だとしたら十分すぎるほどの成果と周りからの評価でしょ。別に僕は文句なんてないよ」
「私の、ルノ様ですよ?周りの人間は既に私の恐ろしさを知り、決して舐めてかかる人はいません……なら、ルノ様も」
「あまり怖いことは考えないでね?僕はのんびりやっていくから良いんだよ。一歩ずつ確実に、自分は自分の道を進む。評価など後からいくらでもついてくるさ」
「……それでも不満なものは不満です」
「ははは、そうリノが僕の為に怒ってもらえるのは嬉しいけどね。それでも僕はこれで満足だよ。必要なものは得た」
「ですが、結局傭兵は雇えませんでした」
「彼らは実際に己の命を懸けてそこに立っているわけだからね。己の大将が若輩であることを避けようとするのは自然だろう。そんな心配しなくていい。うちの領地は元より傭兵を主とする戦闘ではなく、常備兵に税の一種として数年間徴兵して訓練させた予備兵がいるからね。彼らを活用すれば問題ないよ」
我が家のルーツを辿ると傭兵団にたどり着く。
傭兵団が定住して街を築いて出来たのが我が家の領地であり、住民も元は全員傭兵だったのだ。
そんな歴史であるがゆえに、現在の王家へと我が家が服従した時も、今の時代になっても、我らの中には傭兵としての遺伝子が残されており、全員が常在戦場であることが半ば維持されている謎の領地なのだ。
「これでも、王家に仕える領主の中で最も戦上手であるという自負があるよ……だからこそ、反乱軍が怖くもあるけど」
父上は裏切る際に我が家の騎士の半数くらいを取り込んで裏切っている……そんな連中と戦うのはさぞやりにくいことだろう。
「まぁ、今はそんなことを考えても仕方ないけどね。とりあえずはこれからも準備進めないとね」
僕は闇の方に傾いているリノへとそう告げるのだった。
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