処罰
「つまり、結局のところ僕への処罰は何もなくなった、という認識で良いのか?」
色々と言いたいところはある。
だが、それらをすべて押し殺して疑問の声を上げる。
そもそもとして、完全に僕の夢であった貴族という立場を脱ぎ捨て、世界中を旅するという夢は潰えたのだ。
それに対して何も思うなと言われても難しい。
「となると、だぁ……ラステラ侯爵家を継ぐのは僕になるのか……外相、ありやな」
だけど、世界中を見て回るという夢を諦めたわけではない。
別に貴族としてそれを叶えればいいだけ……外交官として世界を見て回るルートもあるだろう。
リノに関してもほら、最低でも僕が恋愛対象として見れそうな前世と同じ高校生くらいの年齢になってから……色々と愛を育めばいいと思うし。
二年待てたのだし、後五、六年待ってもらって……。
「いえ、処罰が完全になくなるわけではないそうです。確かに、ルノ様を前から当主とするという見方をする、ということになりましたが、それでもグレーラインの判断です。ですので、何のお咎めもなしというわけではないそうです」
「……はぁ?」
だが、続く騎士団長の言葉に僕の考えは止められる。
「ルノ様には処罰を受ける代わりとして、自分の身内の裏切り者を処断するため、兵をあげるよう命じられた、という風に我々は聞いています……本当に何も聞いておられないのですか?」
「……」
おっとぉ?風向き変わってきたぞぉ?
「何も、聞いていないなぁ……」
何もかもを僕は知らない。
だって、玉座の前で僕は両足を粉砕されただけだもの。
「リノナーラ様の手前、あまり口にするのも憚れますが、どういう決定がなされているのでしょうね?我々の方に情報が来たのも、実はつい先ほどなのです。ルノ様を見送った後、いきなりやってきた王都からの伝令によって騎士団の方も精鋭を連れて王都に来るよう命じられたときはひどく困惑したものです」
「……な、なるほどぉ」
王家はどうやら臨機応変に動いているらしいね……このフットワークの軽さ、まるですべてを一人が決めているみたいな感じがする、よねぇ。
「……ルノ」
震えた声をもらした僕の背後。
そこに立って己の座る車いすの手押しハンドルを握るリノが僕の耳元で小さな声を上げる。
「新婚旅行、何処に行こっか?ふふっ、私はルノが行きたいところであればどこでもいいよ?ルノと入れるなら私はそれだけで幸せだから……ほら、世界一周旅行とかも楽しそうだね」
そ、そういえば玉座の間で僕はリノに対して世界を見て回りたいという自分の願望を口にしていたね。
「は、ははは……」
僕はリノの言葉に対して、そんなことを考えながら苦笑を漏らすことしか出来なかった。
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