無茶苦茶
リノに車いすを押される形でやってきた扉。
そこを開けると、中で待っていたのは大量の人たち、その全身を鎧で包む人たちであった。
「んなっ……なんで君たちが」
そんな彼らに僕は強い既視感でもって驚愕の声を漏らす。
今、自分の前にいるのはラステラ侯爵領に今も滞在しているはずの我が家に仕える騎士たち。何時ぞやの時、僕とリノが二人して攫われた三歳の時にもお世話になった騎士たちである。
「ルノ様っ、我ら臣下一同!お待ちし……ルノ様ぁぁぁ!?どうなされたのですかぁ!その御姿はぁ!」
既に父上ではなく、僕への忠義心を植え付けさせている彼ら多くの騎士の中の頂点、騎士団長の任を与えられている男、メディウムは車いす姿の僕を見るたび悲鳴を上げる。
「ど、どういうことですか!?国王陛下よりルノ様にはそれ相応の特殊な罰が与えられるという話では……!」
「待てよ、僕の姿は良いんだ。別に大した話じゃないし……そんなことより、だ。それ相応の特殊な罰って何?僕は何も聞かされていないのだけど」
焦る騎士団長を宥め、僕は彼の口から出てきた聞き捨てならない言葉へと深掘りしていく。
「ハッ。王家からの伝令によれば、ルノ様の神童ぶりは目を見張るものがあり、長らく領地を空けていた前当主に代わり、実質的な当主であったと考える。このことより、今より七年前から前当主は既に当主ではない。ゆえに、今回の一件は貴族家の当主による裏切りではなく、ただ当主の身内が裏切っただけであるとする、とのことであり、我らはそのように認識しているのであります」
「なんて?」
僕は騎士団長の言葉を聞き返す。
「いや……なるほど?」
だが、再びの答えを聞くよりも前に僕は自分の中で答えを出す。
要はラステラ侯爵家の当主である父上が敵国へと寝返ったとするのではなく、当時三歳だった僕の手によって当主の座を追われた父上が敵国に寝返っただけであるという話にするということだろう。
貴族家の当主の寝返りであれば一家連座であるが、唯身内が裏切っただけであれば別に連座にはならない。
「何、その裏技……」
理論構成的にはなしじゃないような気もするが……そもそもとして当時、三歳だった僕こそが本当の当主であり、父上は既に当主ではなかったなんて理論は普通に無茶苦茶としか言えないだろう。
だが、そんな無茶苦茶を押し通せる可能性があるとすれば、
「……リノか」
それは僕を断罪する場であったはずの玉座の間において剣を抜いて大暴れしておきながら平然とここに立っているリノしかないだろう。
「そぉーだよ!」
半ば確信と共に呟いた僕の言葉にリノは笑顔で頷くのだった。
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