医務室
罪人として裁かれ、国外へと追放されるはずだった僕。
「なんでこんなことになっているのでしょうか」
そんな僕は今、王宮の医務室へと運ばれていた。
「これは……この足は、酷いね。しばらく動かせないんじゃない?」
リノの手によって完全に粉砕されてしまった僕の両足。
それを検査するのはリノの叔母である爆乳艶ぼくろ二十代後半未亡人たるセーノ・ウェストンだ。
ぐへへ、失礼だけど未亡人ってだけで何かしらのエロさを感じるよね。
「回復魔法で治そうにも、他人じゃ治せないように念入りに呪いまでかけているみたいで……何か、本当にごめんね?私の姪が」
「ははは……まぁ、自分が彼女に対して一切向き合ってこなかったことにも起因しているところもありますし」
「いやいや、そんなことないわ。何があろうとも、自分の好きな人を相手にこんなことをするのは駄目に決まっているじゃない」
優れたる医務官であるセーノさんは僕の足を優しく撫でながら言葉を続ける。……あまり撫でないで欲しい、こそばゆいというかなんというか……。
「あの子が嫌なのであれば逃げても良いからね?既に、リノの影響はだいぶデカくなっているけど、それでも万能というほどでもないわ。精々、彼女の婚約者であるルノをどうするかの決定権くらいよ、持っているのは……もし、君が逃げ出しても国を挙げて追いかけることはないわよ」
「まぁ、負けましたし……あそこまでさせられたらなんか逃げにくいですし、もう諦めます」
わざわざ王宮で権力固めし、あの場であそこまで大暴れして愛を伝えてきたのである。
それを拒絶するのは中々にきついものがあった。
「お、押され弱くない……?君。両足粉砕させられているのに、負けたしリノが頑張ったからという理由で諦めちゃうの?」
「い、いやぁ……その場の雰囲気にどうしても流されやすくて。別にそこまで嫌というわけでもないですし」
僕は押しに弱いのだ、前世からずっと。
何か、周りの雰囲気に勝てずにいつも雰囲気に流されちゃうんだよなぁ。
「ほ、本当に大丈夫……?私の方も自分の夫が亡くなったりでバタバタしてて、リノのことを見ていなかった間に彼女は色々と後宮で肩身の狭い思いをしてみたみたいで……どこか、壊れているわよ?あの子。それでも大丈夫?」
「いやぁ……だとしたら、なおさらじゃないですか?未だに婚約者として見られる気はしないですけど、それでも自分の可愛い妹分ですから。そんな状態だよ?って言われて簡単に見捨てられませんよ」
「……お、お人よしだなぁ。何度も言うけど両足粉砕されているからね?」
医務室のベッドで寝かされている僕はセーノさんと物騒な内容の会話を互いに穏やかな声色で交わしていく。
「ルーノ!もう大丈夫かな!?」
そんな中、車いすを引いているリノが元気よく医務室へと顔を見せに来るのだった。
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